KAMEYAMAⅢ~vol.02 勃起できるかどうかの不安

 

ある程度の年齢になった男たちは、常に勃起できるかどうか不安を抱えているという。37歳、つきあって1年になる同い年の彼女がいる芳樹さんは、最近、ときどき彼女とできなくなることがあるらしい。

「彼女と最初にしたときも、実は僕、できなかったんです。ずっと好きでようやくつきあってもらえたような関係だったから、すごく緊張していて。気まずい雰囲気でしたねえ。でも彼女が、『ね、またしようね』と言ってくれたから救われたんです」

二度目はようやくうまくいき、彼女とのつきあいが始まった。ただ、このところ、彼女との「性欲の違い」を感じることが多々あるという。

「同い年だけど、彼女は元気なんですよねえ。イベント関係の仕事して、週末は資格をとるための学校に通っていて、エアロビも講師の腕前。僕なんて仕事だけで精一杯。週に一度くらいは会うけど、彼女はそのたびにセックスしたいという。しかも2度も3度もせがむんですよ。僕、実はそれほどセックスが強いわけじゃないから、けっこう大変」

最近は勃起力にも持続力にも自信がないという芳樹さん。彼女の欲求がプレッシャーになって、途中で萎えてしまうことさえあるらしい。30代後半で、中折れというのは、一般的には情けない話では?

「そうなんですけどねえ、周りではよく聞きますよ。やっぱり過度な期待をされると,プレッシャーに押しつぶされちゃう世代なんだと思います(笑)」

確かに芳樹さん、細身で童顔、どことなく柔らかな印象。マッチョなイメージはまったくない。

「本当は僕、彼女といちゃいちゃしてるだけで充分に満足なんです。女友だちに言わせると、『女みたいなこと言ってるんじゃない』と叱られますけど。挿入して射精というのだけがセックスじゃないと思うし、それより裸で抱き合いながらしゃべってるほうが好きだったりするんですよ。でも男はそう言うことさえ許されていないような気がしますね」

女性は、男はみんなすぐに挿入したがっていると思いがちだが、必ずしもそうとは限らないのだなあと私も目から鱗が落ちる思いだった。だが、セックス大好きという女性にとっては物足りないだろう。

彼はこれからも勃起できるかどうか不安を抱えながら、彼女とつきあっていくのだろうか。

「実はちょっと悩んでいます。セックスだけじゃなくて、いろんな意味で彼女とは合わないのかもしれないなあ」

彼は少しだけ遠くを見つめながら,そう言った。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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