KAMEYAMAⅢ~vol.11 女性を信じられなくて

 

最近、ちょっとおしゃれなイタリアンレストランやカフェなどに男同士が連れだって来ているのをよく見かける。昔から、男同士は居酒屋にはいても、おしゃれな店にはいなかったものなのだが。

「僕もおいしいものを食べたいときは、男同士で行くことが多いですよ、最近は」
俊夫さん(三十五歳)はそう言う。男同士なら気が置けないし、会計も割り勘ですむ。「女性を誘うと誤解されたり、少なくとも奢ってもらえるんじゃないかと思う人もいるから。気を遣いたくないんですよね」
彼は大学卒業と同時に,一流と言われる企業に勤めたが,人間関係に疲れて五年後に退社。それ以来、派遣で働いていた。学生時代からつきあっていた彼女には、「私は結婚したいの。派遣で働く人とは無理」とあっさりふられた。
その後、同じ派遣という立場の女性にアプローチしたときも、「派遣じゃあね」と受け入れてもらえなかった。彼は何度も挫折しそうになりながら、がんばって資格をとり、三年前にようやくある会社に正社員として採用された。

「友だちが合コンを開催してくれたんですが、正社員というだけで、ちょっとだけモテました。それで、なんだか女性とつきあうのが嫌になってしまったんですよね」
彼自身は何も変わってない。それなのに、立場が変わっただけで女性の彼を見る目が違ってくる。

「女は結局、自分が楽したいだけなんじゃないか。そう思うようになったんです」
独身の男友だちに話してみると、彼も同じように思っていた。学生時代の既婚の友だちに言っても、「そうだよ、結婚なんかしないほうがいいよ」と言われた。

「恋愛したい、誰かを好きになりたいという気持ちがないわけじゃないんです。だけど、女性に対して、基本的に信頼ができない。社内の独身女性の話を聞いていても、『○○さんが結婚する相手は××会社勤務なんだって』『あんな会社じゃたいした給料でないでしょ』というやりとりがなされてる。男の価値は金かよって内心いらいらするけど、そんなこと言えませんしね」
そして、俊夫さんはひとりで行動するようになった。おいしいものが食べたい、話をしたいときは男友だちを誘う。

「周りを見ていても、男同士で遊んでる人たちが多い。みんな恋愛したいと思いながらも、実際には女性を信じられなくて悶々としているんじゃないでしょうか」
女性だけが悪いわけではないだろうけれど、男女の関係がいびつになり、恋愛しにくくなっているのは、私自身もよく感じる。その原因のひとつが、男性の女性不信があるのは事実かもしれない。

 

 

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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