KAMEYAMAⅢ~vol.12 穏やかな恋ができない男の心理
男に振り回されるのが好きという女性がいる。約束をすっぽかされたり、電話すると言いながらしてこなかったり。
「彼はダメな男だから、私が何とかしてあげたい」
女性はそう思って、ダメ男にはまっていく。男同士の目で見ると、「どうしてあんな男に、あんないい彼女がいるの」ということになったりするらしい。
逆もまた真なり。エキセントリックで、ろくに約束を守らない女にどんどんはまっていく男というのがいるものだ。
「最初に、ああ、この女性は危ないなと思うんですよ。すぐに甲高い声でキーキー文句を言ったり、大声で泣き出したりするような、ひどい言い方をすれば社会性のない女。でも、そういう女性に僕ははまってしまうんですよね」
智彦さん(三十二歳)は、苦笑いしながらそう言った。若いけれど、彼の女性遍歴は波瀾に満ちている。バツイチ女性に貯金百万円を貸し、相手が行方不明になったこともある。何かというと「死んでやる」と脅す女に、はまったこともある。
今つきあっているのは、二回りも年上の男性と不倫をしている三十歳の女性。恋愛相談に乗っているうちに深い関係になってしまった。
「男と別れてオレとつきあおうと言ってるのに、彼女はそのオッサンと別れられない。『つらくてもうダメ』と泣いて僕に電話してくるから、彼女の部屋に行って慰める。セックスもしてしまう。『やっぱりあなたとつきあったほうが幸せよね』と言うから、ヤツとは別れるのかと思うと、それはしない。完全に振り回されてる。だけど、僕自身も、彼女を見捨てることができずにいるんです」
そんな自分に酔っているのかと最初は思ったのだが、智彦さんはそんなことはないと断言する。
「彼女の涙を見ると、オレが何とかしてやらなくちゃと真剣に思う。だけど僕の気持ちを弄ぶように、彼女はまたオッサンに抱かれてる。嫉妬と恋しさで、僕はますます彼女に惹かれているような気がします」
波瀾に満ちた、まるでジェットコースターに乗っているかのような恋でないと、彼自身は落ち着かないのかもしれない。
同じ恋愛パターンをずっと繰り返してしまうのは、男女問わずいるものなのだ。本人がそこから抜け出そうと決意し、穏やかな恋で幸せを感じるようにならない限り、なかなか抜け出せないものなのかもしれない。
著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき 亀山早苗(著)
亀山 早苗 (著)
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