KAMEYAMAⅢ~vol.14 妻とバイブを使ってみて

 

前述の誠さんから、ある日、メールが来た。「妻とバイブを使ってみたら、とても楽しかった」のだそうだ。

「偶然、バイブ見つけちゃったんだけどさ、浮気してるの?」

と、おずおず訊いたそうだ。妻は笑いながら、自分で買ったと言った。

「私だってすごくしたいときがあるのよ」「だったらなんでオレに言わないんだよ」

そんなやりとりがあり、次の週末、ふたりは子どもたちを妻の母親に預けて、ラブホテルに行った。

「ラブホなんて結婚後、初めてですからね、緊張しましたよ。同時に、妻とセックスを目的に一緒にいるなんて、やけに新鮮だった」

そう、結婚前は男女はセックスしたくて、一緒にいたくて、時間と場所を共有するのだ。お互いをもっともっと知るために。

そして、結婚というのは、そういう新鮮な気持ちが徐々に薄れていくものなのだ。代わりに「家族」という新しい感覚が生まれるだろうけれど。  誠さんは、妻に教わりながら、バイブを操作した。徐々に高揚していく妻を見ているうちに、今まで感じたことのなかった興奮を覚えたという。

「バイブで何回も妻がイッたのを見届けてから、今度は僕が……。これなら、自分がイカせなくてはいけないというプレッシャーもないから、僕はとても気が楽でした。お互いにとっても自由な気持ちでお互いの身体を楽しむという感覚を初めて味わいました」

男も女も、イカせなくては、イカなくてはというプレッシャーがあると、せっかくのセックスが楽しめなくなるものなのだと思う。イクだけがセックスではない。イクだけならバイブだのオナホールだのでじゅうぶん。男女が裸で一緒にいるのは、いちゃいちゃする楽しみがあるからこそだと思う。これはひとりではできないのだから。

バイブがあればいつでもイケる。だから、男女ともに気が楽になって、結果、相手ともイケる。このときの妻の乱れ方はすさまじかった、と誠さんはにやついた。

「今まで僕はバイブに偏見をもっていたのかもしれません。バイブに頼らなくてもって思ってたけど、実は女性のマスターベーションだけじゃなくて、一緒に楽しむこともできる。それがわかったから、セックスレスから抜け出すことができたんだと思います」

いや、バイブのおかげというよりは、誠さんの柔軟性が夫婦をレスから救ったのだと、私はつくづく感じていた。

 

 

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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