KAMEYAMAⅢ~vol.05 セックス嫌いな男の言い分

 

子どもが産まれてからずっとセックスレスだという女性の話を,よく聞くことがある。ということは、「しない男」が多々いるということでもある。男の言い分も聴いてみたい。そう思っているところへ、「結婚後、1回しかしてない」という男性がいるとわかり、会ってみた。

亮一さん(仮名・48歳)は、化学系のメーカーで開発を担当している。身長百八十センチ、がっしりした体型で,なかなかのイケメンである。結婚して10年、9歳の娘がいて、目に入れても痛くないほどかわいいと表情を緩める。携帯の待ち受けも娘の笑顔だ。

ところがこの彼、結婚してからたった1回しかセックスしていないのだそう。そもそも友だちの紹介で知り合った妻とは、3年つきあって結婚したのだが、当時も数えるほどしかしていなかったという。

「僕、どうしてもセックスが好きになれないんですよ。それは結婚前に彼女にも言いました。彼女はそれでもいいと言ってくれて。子どもは新婚旅行のときにできたようです」

妊娠がわかってから1度もしてないということか……。

それにしても、なぜもともと好きではないのだろうか。何かトラウマがあるとか? そう訊くと、彼自身も首をかしげる。

「わからないんですよね。ただ、射精の感覚があまり好きじゃない。だから若いときもほとんどマスターベーションすらしませんでした。女性が嫌いなわけじゃないんです。正直言って、妻のことは大好き。ふたりだけで出かけたるときは、手をつないでますよ」

5歳年下だという妻は、それで満足しているのだろうか。

「していないと思います。そこが悩みのタネ。つい先日、『若いときはセックスなんて好きじゃないと思っていたけど、今は性欲が強くなったの。誰かに抱かれたい。思い切り突かれたい』って言われて。僕は彼女を愛しているけれど、セックスが好きじゃない。でもこのままだと浮気されそう。どうしたらいいかわからないんです」

嫌いなことを無理してやれとも言えず、私も困惑してしまう。ただ、やはりセックスも夫婦の大事なコミュニケーションのひとつ。そう思えば、多少無理しても、年に数回、トライしてもいいのではないだろうか。あるいは家庭に波風立てない程度に、妻の浮気を認めるしかない。

セックスレスの大半は「めんどくさい」「なんとなく」なのだが、こういうふうに「どうしても好きになれないからしたくない」という人も、明らかに存在する。こういう場合は、夫婦間で、妥協点をどう探っていくかしかないように思う。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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