KAMEYAMAⅢ~vol.06 セックスを拒絶されて……

 

セックスレスは、今や妻が夫に拒否されているだけではない。妻が夫を拒否しているケースも多い。

「うちは2年に1回くらいしか妻がさせてくれません」

そう嘆くのは雄介さん(仮名・45歳)だ。結婚して17年、15歳と13歳の娘がいるが、下の子が生まれてから4年ほどは完全にレスだった。

「このままじゃいけないと思うんだ、と妻を説得して、それから年に2回くらいするようになったんですが、また断られるようになって。その繰り返しです」

同い年の妻は、もともとセックスにそれほど興味がなかったようだ。まじめで、彼が初めての男性だったのだという。私は思わず、「嘘っ」とつぶやいてしまった。

「妻にするならまじめな女性がいいと思っていたんだけど……。ちょっとまじめすぎたかもしれない」

妻はパートで働いているが、家の中のこともきちんとやるし、非の打ち所がない。ただ、とにかく堅物で、雄介さんが、少しでも下ネタを言うと、あからさまに嫌な顔をするらしい。

「娘ふたりがときどき笑ってくれるのが救いです。僕、ときどき風俗に行っちゃうんだけど、本当なら妻と濃厚なセックスを楽しみたいんですよね。でも妻にそういう話をすると、『もう卒業してもいいんじゃない?』って」

雄介さんはせつなそうな表情でそう言う。セックスが大事だと思う人と、夫婦なんだからむしろ今さらセックスなんてしなくてもいいんじゃないかと考えている人との落差は大きい。

だが、夫婦なんだか、もっと楽しめるはずという雄介さんの気持ちはよくわかる。生殖から解き放たれ、なおかつ日常を共にしている信頼できる相手とのセックスこそ、もっと自由に楽しむべきだとも思う。

しかも、実際には、女性は四十代がいちばん性欲が強まるはずなので、少しずつ懐柔していけばできないことはないような気がする。まずは、スキンシップをはかり、常に仲良くすることが大事だ。

「妻ともっと仲良くしたい、ふたりでもっと感じたいと願っている男って、けっこういると思います。妻側も夫のそんな気持ちをわかってほしいですよね」

セックスなんて、と眉をひそめる前に、女性も男のこんなせつない気持ちを少し想像してみてもいいかもしれない。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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