KAMEYAMAⅢ~vol.03 男たちの戸惑い

 

草食系男子と言われたり、でも実は女性が望んでいるのは「ロールキャベツ」で、外見は草食系に見えながら、実は内面は肉食系だと言われたり。今の時代、男たちは、「どうしたら女性にモテるか」がわからず、悩んだあげくに「現実の女なんていらない」と、関係性を放棄しているように見える。男たちにとっては、苦難の時代なのではないだろうか。

男女の関係においても女性たちが積極的になり、しかもその好みが多様化しているせいもあるだろうし、不況のあおりを受けて好みと条件が一致せずに女性たち自身が迷っているせいもありそうだ。

「以前は合コンなんてしても、ほとんど見向きもされなかったんだけど、今は鵜の目鷹の目の女性が多くて疲れちゃった。ちょっと合コンから遠ざかっています」

苦笑いしながらそう言うのは、健司さん(35歳)。28歳のとき、学生時代からつきあっていた彼女にフラれた。彼自身、誰が聞いても知っている会社に勤めているのだが、その彼女は、自分が勤めていた会社の社長の御曹司と電撃結婚してしまったのだという。

「ショックでしたね。女はやっぱり金なのか、と。7年もつきあってきたのに、僕たちの関係は何だったのか、1年は立ち直れなかった。友だちが心配して合コンに誘ってくれるようになったんだけど、あくまでも僕なんか『そこそこの会社』ですから、当時は合コンも盛り上がらなかったですね」

ただ、様子が変わったのはここ数年。知られた会社で正社員というだけで、女性たちが近づいてくるようになってきた。

「正社員だからって安泰というわけじゃないんですけどね。でも、そういうのが見え見えだと、つきあう気になれないんですよ」

それでも昨年、性格のよさそうな3歳年下の女性とつきあい始めた。つきあって3ヶ月たち、彼は彼女をベッドに誘った。

「彼女の性格なのかどうかわからないけど、ものすごく受け身なんですよね。自分からは何もしない。女友だちに聞いたら、『自分から積極的になりすぎると、嫌われるんじゃないかと心配してるのよ、きっと』って。そんな関係、つまらない。僕は優位に立ちたいわけじゃないし、デートもセックスも一緒に楽しみたいだけなのに」

健司さんは当初、彼女のことが本気で好きだったのだが、つきあっていくうちに物足りなくなり、半年後には別れた。彼女は結婚を焦っていたらしい、とあとから共通の知り合いに聞いた。

「最後には僕、彼女相手だと勃起もしなくなりました。結婚相手の駒として見られているだけだったのかと思うと落ち込みます。もうしばらく、特定の女性とはつきあいたくない。そんな気分ですね」

男心も案外複雑なのである。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

人はなぜ不倫をするのか 亀山早苗(著)

発売日: 2016/8/6
「人はなぜ不倫をするのか」。きっと少なくない人が、その答えを探している。本書はこの問いかけを第一線で活躍する8名の学者陣にぶつけた本だ。「ジェンダー研究」「昆虫学」「動物行動学」「宗教学」「心理学」「性科学」「行動遺伝学」「脳」。さまざまなジャンルの専門家が、それぞれの学問をベースに不倫を解説する。