KAMEYAMA,  KAMEYAMA~シーズンⅣ~

KAMEYAMAⅣ~vol.20 熟年離婚の原因とは

 

結婚して25年、銀婚式を迎えて子どもたちからお祝いをもらったと嬉しそうに話していた友人のカズコさん(52歳)が、その1年後に離婚。このニュースは友人たちの誰もが驚いた。彼女は2歳年下の夫と、ずっと仲がよかったからだ。仲間内で食事をしても、よく夫が迎えに来たりしていたのだから。

いったいどうしたの、何があったのと訊ねると、なんとびっくり、彼女に好きな人ができてしまったのだという。

「だからといって再婚するつもりはないの。ただ、相手が独身だから、私も独身に戻ろうかなって。不倫でもいいんだけど、なんだか卑怯な気がしてね」

うーん。私たちはみんな唸った。彼女らしい潔さではあるのだが、だからといって離婚をしなくても、他に方法はあったのではないだろうか。

「私、夫には本当に感謝してるのよ。いい家庭生活だった。ふたりで働きながら必死で子どもを育ててきたしね。だけど子どもたちがふたりとも独立して家を出てからは、なんだか夫との生活が楽しくなくて。そんなとき仕事関係の彼に出会ったの。5歳年下で離婚歴があるけど、一気に燃え上がっちゃって」

25年ぶりの恋愛感情に、彼女は冷静ではいられなかった。それでも、まさか離婚するところまではいくまいと本人も思っていたのだそうだ。

「こういう言い方をするのは自分でもどうかと思うけど、彼とのセックスがとにかく楽しかったし気持ちよかったの。私、今までとても貧しいセックスしかしてなかったんだとわかった。1年つきあっても、まだまだセックスに飽きないのよ。彼も,再婚しなくてもいいけど、お互いに独り身だったらもっと自由に会えるのにって言い出して。私も夫を騙してことに心が痛かったからね」

彼女は夫にすべてを話して家を出た。夫がどれほどショックを受けるのかはわかっていたが、今までの生活に感謝しているからこそ、正直でありたかったのだという。

「子どもたちにも全部話した。上の娘はわかってくれたけど、下の息子は反発したわね。でもしょうがないの、もう決めたことだから」

カズコさんは晴れやかに笑う。夫は今までの家に住んでいる。離婚届けにふたりで判を押したとき、夫は黙って500万円の預金通帳を寄越した。それは夫が彼女名義で貯めていたものだった。

「これほど私のことを思っていてくれたなんて、と泣けた。自分がとんでもないことをしたのだとも思った。それでももう止められなかったのよ。地獄に堕ちるかもね、私」

私たちは誰も言葉を発することができなかった。みんな心の中で、彼女の夫に深く同情していたのだと思う。それでも、彼女が自分で決めた決断を批判することはできない。50女の叛乱、と彼女は笑ったが、欲得を考えずに自分に正直に生きようとしている彼女を、友人である私たちは見守っていくしかないのだろう。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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