KAMEYAMA,  KAMEYAMA~シーズンⅣ~

KAMEYAMAⅣ~vol.19 結婚はしたものの

 

「結婚したい」とここ数年、ずっと言っていたマリコさん(34歳)が、同い年の人とついに結婚したと連絡をくれた。新婚3ヶ月の彼女に会ったのだが、どこか浮かない顔をしている。

「彼はとても理解があって、私の今までの生活をまったく変えなくていいと言ってくれたの。だから仕事も続けているし、家事は彼がかなりやってくれてるから、かえって楽になったくらい。だけどねえ」

彼女はそこでふっとため息をつく。そして周りを見わたしながら声を落とした。

「私たち、結婚前にセックスしてないのよ。しかも結婚してからもしてない」

ひええと私は声を上げた。今どき、そんなことがあるのか、と。

そもそも、ふたりの結びつきが不可解だった。出会いは半年前。共通の友だちの食事会で知り合った。何度かグループで会い、帰りの方角が同じだったので、ふたりだけで飲みに行った。そのとき、彼女は仕事上の人間関係で非常に悩んでいたのだという。

「彼は親身になって相談に乗ってくれたの。解決策も出してくれた。それで私、『あなたみたいな人と結婚したらいいだろうなあ』と酔った勢いで言っちゃったのよ。そうしたら話がとんとん進んで」

1ヶ月後には両家の親が揃って食事会、そのまま婚姻届を提出した。結婚式も新婚旅行もせず、彼のマンションに彼女が引っ越しただけ。

「彼は夜勤もある仕事なので、平日は、なかなか顔を合わせる機会もない。一緒にいる時間は楽しいんだけど、なんか兄弟といるみたいでセックスする気分になれないの。向こうもそうなんじゃないかなあ。ふたりともお酒が好きだから、一緒にいると酔っていつの間にか寝ちゃうことが多いし」

恋愛感情がほとんどない、だが一緒にいると気持ちがラク。そんな関係も悪くはないが、一度もセックスしていないというのは、夫婦としてどうなのだろう。

もともと、マリコさんはモテる女だ。結婚したら気が楽になって、男友だちとの飲み会などにもいそいそ出かけていくらしい。口説かれたらどうするのと訊ねると、「今のところは大丈夫」と笑った。

「今はすっかり性欲をなくしてるから。だけど、そろそろしたいなあという気持ちになってきているの。だから危ないよね」

とりあえず、「夫」となった人としてみたほうがいいと真剣に言ってみた。それから1ヶ月、彼女からは「まだしてない。そろそろ私が限界かも」という報告があった。なぜあと一歩、夫に対して踏み込めないのかが、私にはとても不思議でならない。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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