KAMEYAMAⅣ~vol.21 同世代の彼と年上の彼・・

 

一昔前と違って、最近は不倫の恋に悩む独身女性が少なくなっている。損な恋愛はしなくなっているのと同時に、相手が既婚男性であっても携帯電話やSNSなどで簡単に連絡がとれるためだと思う。

半年ほど前、30歳以上年上の職場の上司とつきあっているミホさん(27歳)から、「このままでいいわけじゃないけど、今は彼と離れられない」という話を聞いた。彼女とはその後もメールをやりとりしていたのだが、つい最近、同世代の彼ができたと連絡が来た。早速会って話を聞くと、彼は28歳、つきあって2ヶ月になるそうだ。

「ディズニーランドは、年上の彼とは行けなかったから楽しかった。同世代だとやっぱり話も会うし」

と、わくわくした様子で話してくれる。ところが、なんと年上の彼とも別れていないのだとか。

「年上の上司のほうがセックスがいい。今まで、それがあるから離れられなかった。でも、今回は、彼ができたから別れましょうって言ったんです。そのときは『オレは既婚者だし、若いミホには幸せになってほしい』って泣いたんです。その涙に私もほだされちゃって、その日、上司を部屋に入れてしまった。そうしたら、いつもよりもっと感じて。『ミホがよければ、これからもたまに会ってほしい』と言われて、思わず頷いたんです」

同世代の彼とは得られない快感。それがあるから、年上の上司と離れられない。気持ちがわかるが、同世代の彼に知られたら……。「彼との関係では、外でデートしたり食事したりしたあと、私が彼の部屋に泊まるんです。あちらのほうが広いので。彼が私の部屋にくることはめったにないから、ばれないと思うんですよね。もちろん、細心の注意を払わなくてはいけないけど」

今まで二股などかけたこともないという彼女だが、いざとなると淡々としている。彼を失いたくないと言いながら、そして彼に対する罪悪感はあると言いながら、上司との関係も手放したくはないのだろう。

「上司とセックスすると、これだけはまだ失いたくないと思っちゃう。ずるいのはわかっているんだけど」

上司もまた、若い彼女を失いたくはない。ただ、そこで熱くなりすぎて彼女との関係を職場で暴露したりしないといいのだが。

「上司は大人ですから、そういうことはしないと思うんだけど……。甘いですかね」

彼女は私の顔をのぞき込むようにして言った。甘いとも甘くないとも言い切れない。ただ、若い彼女の,なんとも言えないある種のしたたかさをその表情に見るような気がしてならなかった。もちろん、それが悪いことではないのだけれど。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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