KAMEYAMAⅣ~vol.22 セックスが嫌いな女たち

 

いつの時代もそうだったのかもしれないが、特に最近は、「セックスが好き」な男女と「嫌い」な男女が二極化しているのではないかと感じている。昔は「女性は結婚するまで純潔であるべき」という常識がまかり通っていたので、今ほど極端ではなかったと予想できるのだ。

セックスは、妊娠・出産を考えなければ、したければすればいい、したくなければしなければいいというだけのことなのだが、それでも「セックスしたくない」「嫌い」という声にはつい耳が反応してしまう。

「私はセックスが嫌い。もう一生しなくてもいいと思っています」

そう言うのは、カナさん(30歳)だ。学生時代、3ヶ月ほどつきあった男性とは1度しただけで、「痛かったのに思いやってくれなかったら、もうつきあう気がなくなった」とすぐに別れた。

社会人になって半年目に、社内の先輩とつきあうようになった。結婚も考えた。

「だけどセックスしてみたら、やっぱり私は痛いだけで気持ちよくなかった。彼は優しかったので気を遣ってくれたけど、何度やっても気持ちよくない。そのうち、セックスするくらいなら彼と会わないほうがいいとまで思いつめちゃって」

結局、1年もつきあわずに別れた。彼女自身も努力はしたのだという。

「彼の言うように目を閉じて、なにも考えずに体の感覚に身を任せて……。でもそうすると、なんのためにこんなことをしているんだろう、どうして好きだとこんなことをしなければいけないのだろうと疑問が次々わいてきて。彼に尋ねたこともあります。彼は『好きな人とひとつになりたいから』と言ったけど、私にはよくわからなかった。もともとスキンシップが好きじゃないんでしょうね」

家庭的に特に問題があったわけではないそうだ。母親からはスキンシップをじゅうぶん与えられたと思うと語る。ただ、父親とは疎遠な関係だった。だが、父親と疎遠だったり、男親の愛情を知らないで育った人は五万といる。みんなが彼女のようにセックス嫌いになるわけでもない。

「もう7年くらいしていませんね。マスターベーションもしません。性欲というのがどういうものかもよくわからない。男性と飲みにいって話すのは嫌いじゃないけど、面倒なことにならないように、グループで行くことが多いです。セックスを伴う関係はもういらないとも思います」

こういう人は、もし好きな人が出てくれば、今度こそ変わるのだろうか。もちろん、恋愛もセックスと同様、したくなければしなくていいのだが、どこか彼女の頑なな表情が気になってならない。

「私、どこかおかしいのかなと思ったこともあるんですが、ここまで来たら、自分の心の声に忠実になるしかなくて」

スポーツが好きな人も嫌いな人もいる。単純に嗜好の問題なのかもしれない。セックスしなくても彼女と一緒にいたいと思う男性も現われる可能性だってある。

人間、結局は自分の好むようにしか生きていけないのではないか。彼女と別れて,私はぼんやりとそんなふうに感じていた。

 

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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