KAMEYAMAⅣ~vol.23 家庭以外に息抜きを求めて

 

このところ、50歳前後の男性たちから話を聞くことが多い。家庭も仕事も落ち着いた状態の彼らは、しかし、このまま人生を終わりたくないという強い気持ちも持っている。 オサムさん(仮名・52歳)は、半世紀生きてきたんだなと思ったとき、人生への考え方が変わったという。

「ちょうど下の子も大学生になったし、もう親としての役目も終えた。昔なら人生50年で死んでいてもおかしくない年齢。それだったら、あとは自分の人生を楽しんでもいいんじゃないか、ということを妻と話しました」

妻も頷いた。ふたりで一緒にゴルフを始めたそうだ。だが、彼の心の中には、もうひとつ「しておきたいこと」があった。

「それが恋だったんですよ、恥ずかしながら。誰かを心から好きになりたい。どきどきしたい。本当にそう思いました。妻のことは好きだし、ずっと一緒に歩いてきて感謝もしてる。だけど、もはや恋とは違うんですよね」

まあ、都合のいいことを言ってると言ってしまえばそれまでなのだが、こういう心情、女性も実はもっているので、よくわかる。女性も同じように思っていることは、たぶんオサムさんは知らないだろうけれど。

そしてオサムさんは恋してしまった。しかも25歳の独身女性に。外見は若く見えるオサムさんだが、それほど若い女性とつきあえるとは。失礼ながらちょっと驚いた。

「仕事で関係のある会社に勤めている女性なんですが、向上心があって、素敵な人ですよ。仕事や恋愛の相談に乗っているうちに、そういう関係になってしまって。自分でもまさかそんなことになるとは思っていなかったから、最初は戸惑いました」

若い女性から見たら、彼は魅力的なのだろう。セックスだって若い男性のように性急には求めない。自分の快感より、彼女を感じさせたいと思うようになっている。そういうところが女性を惹きつけるのかもしれない。

「もちろん、妻に対しては罪悪感があります。だからこそ、妻との時間ももっと充実させようと思うようになった。彼女にも、いずれ、いい男だったなと思ってもらいたい。彼女は僕を踏み台にしてくれればいい」

彼はどうやら本心からそう思っているようだ。婚外恋愛がいいとは言えないが、彼は今、充実した日々を送っている。

もし、彼の妻が同じようなことをしていたら、どうするのだろう。

「それはそれでしかたがない。彼女の人生ですから、僕がどうこうしろとは言えません。ただ、知りたくはないですね。だから僕も妻には絶対気づかれないよう、細心の注意を払っています」

子どもが育ったあとの夫婦としての後半生。これからの世代は、今までの老夫婦とは違う生き方をするのかもしれない。夫婦で楽しみを見つけたり、あるいは互いに外で恋愛したり、家庭内別居したり、離婚したり。いろいろな形が出てくるのではないだろうか。

それはそれでいいことではないか。後悔しない充実した自分の人生を送るために、夫婦で話し合って決めていく。長い人生を、最後まで配偶者に束縛されなければいけないというものではあるまい。

 

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

復讐手帖─愛が狂気に変わるとき 亀山早苗(著)

発売日: 2017/9/22
亀山 早苗 (著)
男の裏切り、心変わり…別れた男、不倫相手、夫…行き場を失った女の想いが向かう果て。ボンド、下剤、剃毛、暴露、破壊、尾行…実録!復讐劇の数々。