KAMEYAMAⅣ~vol.12 「セックスが下手」と「遊んでる女」、どっちが不名誉?

 

数日の間に、ふたりの20代後半女性からまったく違うのに、なぜか共通点がある話を聞いた。まずはA子。

「彼にセックスが下手だというような内容のことを言われて落ち込んだ」

そしてB子。

「つきあい始めて1ヶ月の彼が、冗談交じりに『セックスうまいね。相当、遊んできたでしょ』って。私、彼が三人目なのに」

これ、裏を返せば、A子の彼は性的に未熟で、B子の彼は遊んできた男だと言うこともできる。

男女ともに、相手のセックスの「うまい下手」を評価して伝えるというのは、とても失礼なことだと思う。「自分に合う合わない」はあるとしても、世間的にうまい下手を評価できるほど、おまえは異性を知っているのか、ということだ。たとえ1万人知っていても、、たかが1万である。

つまり、「下手だね」「うまいからたくさん遊んだんでしょ」と言うような異性とは、つきあうことさえ考えたほうがいいのではないかと私は思う。こういう人は、セックスのみならず、「料理がうまいね。料理にうるさい異性とつきあってきたんでしょ」などと言い出しそうだから。

セックスは,想像力と観察力だ。この人はどんな性幻想をもっていて、どんなことに感応するのか、この表情は気持ちよくなる寸前ではないのか。そういった想像と観察を駆使しながら、お互いの一致点を見つけていくことが大事なのだと思う。それを放棄して、あっさり「うまい」「下手」と成績をつけてしまうような相手と、この先もうまくやっていけるのだろうか。

結果的に、「下手」と言われたA子は、その彼とうまくいかず別れた。そして「遊んできた」と言われたB子は、多少、セックスで自制をしつつ今もつきあっている。

「私は遊びじゃなくて本気でつきあっているんだけど、彼は私をセフレくらいにしか思ってないかもしれない」

B子は、そんな不安を抱きつつ、彼とのセックスを続けている。

もしかしたら、彼は悪気がなく言っただけで、言ったことさえ忘れているかもしれない。だが、彼女がそれを気にして、セフレ扱いされていると感じるなら、いつか確認したほうがいい。セフレ扱いだと思いながら、自分は本気でつきあうなんて、せつないではないか。彼も本気で好きだと思っている可能性もある。ただ、うっかりそんなことを言ってしまっただけで。

どうせ恋するなら、お互いに「本気で好き」と思ってつきあいたいもの。気持ちが盛り上がらないのに、体だけが燃え続けるなんてことはない。ゆきずりで燃えることもあるけれど、それはまた別の話。「この人のことが本当に好き」と思いながら、身も心も満たされたいではないか。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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