KAMEYAMAⅣ~vol.05 リベンジポルノ

 

蜜月というものは長くは続かない。特に若い時期の恋愛の場合、恋も情熱も愛も性欲も一緒くたにしてしまうから、「この恋は永遠に続く」と熱病にかかったようになる。

ある日はたと目が覚め、別れようと思っても、相手もなかなか承服しない。勢いでひどいことを言ってしまう可能性もある。

一方的に別れを告げられたほうは逆上する。別れてから復讐のために、蜜月時代に撮った画像などをネットで流出させてやろうと思うかもしれない。それをリベンジポルノとかサイバーリベンジと言う。米カリフォルニアでは、禁止法ができ、処罰の対象となっている。

「かわいさあまって憎さ百倍」とは、昔から言われている諺。好きだからこそ、愛情は憎さに代わり、しかも百倍返しとなってしまうのだ。いざというとき、どこまで復讐心を燃やす相手なのか、それを見定めるのは、若い目ではむずかしい。だからといって、恋に突っ走る気持ちも止められないだろう。

昔は、失恋したときは友だちに話し、みんなで慰めて朝まで酔いつぶれるということがよくあった。友だちの恋愛は、だいたいみんな知っていたものだ。私自身も学生時代、友だちがこっぴどくふられたのを知って、みんなでその男を問い詰めたことがあった。彼女は泣くばかりだったので、私たちがひたすら男を責めた。男はもごもごするばかりだったが、最後には、「ごめん。申し訳ないけど、もう好きじゃなくなったんだ。許して」と土下座した。

蹴りでも入れろとみんなで言ったが、彼女は、「もういい」と彼を解放した。その後は彼女がお酒を飲めなかったので、ケーキやけ食いにつきあった記憶がある。翌日以降も講義によっては、私たちが彼と顔を合わせる機会もあったのだが、特にわだかまりは残らず、ごく普通に話をしていた。これが男友だちの場合は、みんなで居酒屋に直行だった。

一方的に恋心を断ち切られた当事者には、何らかの「けじめ」が必要なのだと思う。大人であれば、経験則で、こんなつらい時期は一時だと思えるが、若いときは、「その恋が人生最大にして最重要」だと思いがちだから。 恋を失っても、実質的な復讐なんて考えてはいけない。相手の命も自分の人生も、大事に考えなければ。一時期であっても、身も心も寄り添った仲ならよけいに……。

失った恋があまりに痛手で苦しむということは、決して恥ずかしいことではない。誰もが通る道。そこをどうやって凌いでいくかによって、人間として大きくなれるかどうかが決まってくる。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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