KAMEYAMAⅢ~vol.08 セックスできない男の苦しみ

 

40代前半で糖尿病が悪化し、セックスできなくなった和則さん(45歳)。結婚して17年たつ妻は、40歳になったばかりだ。中学生と小学生の一男一女がいる。

「僕は自営業だし、ずっと健康だったから、健康診断もろくに受けなかったんですよ。3年ほど前、なんだかだるいし、やたら喉が渇くし性欲はないし。なんだかおかしいなと思って医者に行ったら、糖尿病がかなり進んでいたんです」

そういえば、30代後半からすでに性欲はほとんどなくなっていたと、そのときに気づいたのだという。

「それでも妻が求めてきたときは応じるようにしていたんですが、途中でダメになることもありました。糖尿病と病名がついてからは、妻もあきらめたみたいだったんですが」

だが、彼は1年半ほど前、妻がタンスにバイブレーターを隠しもっているのをたまたま見てしまった。

「正直言って、妻がこれを使っているのかと思うとショックでした。うちは自宅の一角が仕事場で密室になってますから、子どもたちがいない昼間、妻はこっそり使うことはできる……。最初は、こっちが病気なのにとちょっとむっとしたけど、考えてみれば妻もかわいそうですよね」

自分ができないのだから、バイブくらいはしかたがないと和則さんは思った。

しかし、半年前、妻が出会い系サイトにアクセスしていると知ったときは、さすがに混乱したという。

「テーブルの上に置いてあった妻の携帯が鳴ったので、思わず開いてしまったんですよ。メールだったんだけど、どうやら出会い系を通じてやりとりしているらしかった。うっかり見たともいえないので、つい削除してしまいました。でもそれ以来、気になって」

なんとか勃起できないものかと思ったが、そもそも性欲がわかない。治療はしていても、性欲回復には至っていないそうだ。

「俺がこんな病気だから浮気したいんじゃないかと訊いてみたことがあります。でも妻には『何言ってるのよ』と流されてしまった。今も誰かと会っているのかもしれないと思うと、ときどきたまらない気分になる。だからといって自分はできない。真実を知りたいような知りたくないような。本当につらいです」
苦しそうな和則さんの表情が、目に焼きついて離れない。

夫婦のどちらかが病気でできない、という家はいくらでもあるだろう。セックスの問題はどうしているのだろうか。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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