KAMEYAMAⅡ~vol.13 妻と恋人、求めるものが違う

 

ときどき、結婚と離婚を繰り返す人がいる。
「懲りないねえ」と人に言われようがどうしようが、彼らはまたも結婚する。相手になにを求めて結婚し、なにに絶望して離婚するのだろう。

3度の離婚を経験し、現在は別の女性と恋人関係にある40代の男性Aさんに会った。最初は26歳で結婚、娘をもうけたが30歳で離婚。2度目は32歳で結婚、息子がいながら今度は5年で離婚。38歳で3度目の結婚をするがこれまた4年で離婚。以来、3年間、ひとり暮らしをしているのだが、1年前からつきあい始めた10歳年下の女性と「いい関係」を築いているそうだ。

「僕の場合は女性から刺激を受けたいんです」

Aさんはそう言う。結婚すると、女性はどうしても「家庭を盤石なものに」したがる。そうなると「父と母」「夫と妻」という役割しかできなくなってしまう。男女として、もっと刺激的な関係でいたいのに、と彼は嘆く。 一般的に、子どもができれば家庭は子ども中心に回る。その中で親たちは落ち着いた生活を育んでいくものだ。だが、Aさんにはそれが我慢できない。

「妻が母になっていくと、僕の目にはもう女性として映らなくなる。向こうも同じでしょう。ただ、家庭を維持していくだけでセックスもなくなっていく。2度目の結婚生活で、あるとき、妻を誘ったら、『あなたってそういうことしか考えてないの』と言われたんです。ショックでしたよ」

いつまでも恋人同士のような男女でいたかったと彼は言う。
だが、現実に子育てをしている妻から見ると「毎日の生活が大事なの。甘いこと言わないで」となるのかもしれない。“男女”にはミステリアスな部分も必要。お互いのことが完全に理解できないからこそ、知ろうとして話すし、言葉以外のコミュニケーションも求めようとする。だが、日常生活を共にしてしまうと、そのミステリアスな面は消えてしまう。互いを同居人とか、子どもの親としか見られなくなっていくのを、私はある程度、やむを得ないことだと思う。通常、男たちも、それに慣れていくはずだ。

だがAさんは我慢できない。
だから外に「自分を男として見てくれる女」を求める。そしてその女性と関係をもつと、彼女に導かれるように結婚しなければいけないと思ってしまうらしい。だが、結婚生活はまた同じように「日常」が繰り返されるだけなのだ。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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