KAMEYAMAⅡ~vol.15 セックスレスの裏に潜む感情

 

このところ、またも夫婦のセックスレスについて話を聞く機会が多くなっている。結婚20年、そのうち15年はレスだという関係はざらにある。悶々としながら、それでも子どもたちをきちんと育て、趣味や仕事など他に目を向けながらがんばって暮らしている女性たちには頭が下がるほどだ。

「もう自分には恋なんて訪れるはずもない。このまま夫と同居人として生きていくしかないと腹をくくっていた」

そう語るA子さん(45歳)に、恋が訪れたのは2年前。
最初は拒否した。「不倫」なんてとんでもないとさえ思ったらしい。それでも相手の説得と誠意に打たれた。不倫なのに誠意というのはおかしいかもしれない。だが結婚生活と恋愛とは違うと、今は多くの人たちが実感しているはずだ

相手を好きだが,肉体関係にまでは踏み込めないと考える女性もいる。A子さんもそうだった。彼はゆっくり待ってくれた。いけないとわかっていながら、彼女はとうとう関係をもったそうだ。

「愛されている。彼は私を大事に思ってくれている。それがうれしくて、私も彼とひとつになりたいと思った」

それ以来、深く静かにふたりの関係は続いている。
お互いに家庭を第一に考え、情熱をコントロールしながら、だがお互いを思い合って……。

だが、彼女は夫に対しても複雑な感情を抱き続けている。

「夫とは長い間、セックスレスだけど、もし求められたら応じると思う。言葉の暴力もあったし、振り向いてもらえない哀しさもあるけれど、それでも夫を心底、嫌いにはなれないんです」

顔を見るのも嫌、同じ部屋の空気を吸うのも嫌であれば、どんな無理をしてもきっと人は別れているはずだと思う。彼女が離婚しなかったのは、経済的な問題もあるが、夫を心の底から嫌いになれなかったことにある。

「彼との恋愛がなくなったら、私は生きていけるかどうかわからない。それほど好きなんです。だけどそれと、夫と別れるかどうかは別の話。顔色をうかがいながらの結婚生活でも、この暮らしを捨てることはできない」

ひょっとしたら、離婚することは、彼女が自分自身を否定することにつながると考えているからかもしれない。夫への、そして自分自身への愛憎相半ばする複雑な感情。セックスレスの裏には、そんな気持ちも見え隠れする。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

 

 

 

 

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