KAMEYAMAⅡ~vol.12 夫の浮気、そして私の・・・

 

夫の浮気を見つけてしまった妻というのは案外多い。U子さん(39歳)もそのひとり。結婚10年、ふたりの子にも恵まれ、共働きをしながら家庭を夫と一緒に築いている実感があった。セックスだって夫と楽しんでいた。「それなのに2年前、夫は出張だと偽って、部下の女性と旅行していたんです」

ちょうどそのとき子どもが学校で骨折、慌てた彼女は夫の携帯に電話をかけた。だが、いつまでたっても夫の携帯は電源が切られたまま。翌日の夜、ようやく夫は帰ってきた。怒りまくって問い詰めると、夫は浮気を白状。「思いあまって夫を殴ってしまいました」
夫もよほど反省したのか、それからは前にも増して、家事や育児に協力してくれた。半年後、夫とのセックスも回復。

「だけどその半年後、今から1年前に私、会社帰りに元カレにばったり会っちゃったんです。大学時代から5年つきあった人でした」

つまらないことから大げんかに発展、若さの勢いで別れてしまったが、彼女の心の中にはいつも彼がいた。復活してしまうのもやむを得ないのかもしれない。

「彼も家庭をもっていたけど、再会した当時は離婚したばかり。寂しかったんでしょうね。私も好きだから拒絶できない。結局、時間をやりくりして関係が続いています」
夫をあれほど非難した自分が、夫や子どもの目を盗んで、他の男に走っている。その罪悪感から、彼女は押しつぶされそうになることもある。だが、彼に会って抱かれている時間は「かけがえのないもの」とも断言する。 苦しい、と彼女は涙ぐむ。だが、その苦しさこそ、ある意味では「不倫の醍醐味」でもある。会いたいのに会えない、だから会うと燃える。人間、恋に落ちると、いけないとわかっていても、自分を制御することができなくなるのだろう。

「別れたほうがいいに決まってる。だけど彼に好きな人ができるまでは、このままでもいいかもしれないと思う自分もいる」
U子さんは率直にそう話してくれた。誰にも、この恋をやめろとは言えない。また、言ったとしても彼女がそれに素直に従うとも思えない。厄介で甘美な苦悩のまっただ中にいる人にはなにを言っても通用しないのだ。

だから私が言えるのはただひとつ。なにがあっても、夫にばれないように気をつけること。彼と会っているときと、家とでは気持ちを切り替えること。彼女はしっかりと頷いた。 あとは恋の炎が冷めるのを待ち続けるしかないのかもしれない。

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

 

 

 

人はなぜ不倫をするのか 亀山早苗(著)

発売日: 2016/8/6
「人はなぜ不倫をするのか」。きっと少なくない人が、その答えを探している。本書はこの問いかけを第一線で活躍する8名の学者陣にぶつけた本だ。「ジェンダー研究」「昆虫学」「動物行動学」「宗教学」「心理学」「性科学」「行動遺伝学」「脳」。さまざまなジャンルの専門家が、それぞれの学問をベースに不倫を解説する。