KAMEYAMAⅠ~vol.2 本当に好きかどうかを知るために~

 

ときどき「片思い」について相談されることがある。

「同じ会社に勤める6歳年下の男性を好きになってしまいました。どうしたらいいでしょうか」

というようなもの。好きならランチにでも誘えばいいと思うのだが、彼女たちは「噂がたつのは怖い」「自分から粉をかけるのは恥ずかしい」「ましてや拒絶されたらどうしよう」とぐるぐる考えてしまい、結局、毎日、恋する熱だけを抱えて苦しんでいる。その情熱たるや、かなりの迫力がある。

そんなとき私は不思議に思うのだ。どうして何もしていないのに、ここまで好きになれるんだろう、と。
私の片思いは中学生のとき先輩に憧れた時点で止まっている。それ以来、片思いはしたことがない。好きなら自分から近寄ってみる、話してみる、相手にも脈があるかどうか探る、相手の興味のありそうなものをネタにデートに持ち込む。そして3回目のデートまでにはエッチもしてみる。もちろん会ってすぐのエッチだってかまわない。

そこまでいって、初めて「この人、好きだわ」となる。「気になる人」が「好きな人」に変わる瞬間だ。もちろん、1回こっきりで終わる関係もある。それはそれでお互いに「何か」が合わないと思ったのだからしかたがない。身も心も含めて人を好きになるのであって、プラトニックラブなど私は信じないし、好きな人とはセックスで感じたい。

「そこまで恋い焦がれて、相手を理想像に押し込めてしまうと、現実の相手を見られなくなっちゃうんじゃない?」

片思いしている人にそう言うと、彼女たちは少女漫画のように目をきらきらさせて、力強く答える。

「そんなはずはない。毎日仕事で接していて、その人間性はわかっている。本当に素敵な人なの」

職場では、誰もが社会的良識に則ってがんばっている。それとひとりの男としての素顔はまた別だろう。本当に好きかどうかを知るためには、早く近づいてエッチしてしまったほうがいいのになと思う。彼を理想の男と思い込んで妄想がふくらむ前に。

 

著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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