KAMEYAMAⅠ~vol.3 セックスは大事だ!

 

27歳のとき、4年つきあった(うち2年間は同棲していた)男と結婚した。
結婚生活は3年ほどだったが、私は同棲時代も含めて、朝に晩にセックスをねだった。彼は結婚をためらっていたが、結局、私が「一緒にならなければ死ぬ」と15階の部屋から身を乗り出したので、「とりあえず結婚するしかない」と腹をくくったらしい。

結婚するとき、彼は「ひとつだけ聞いていい?」とまじめな顔で言った。

「もしオレが事故か病気で下半身不随になって、セックスできなくなったらどうする?」

私は即答した。

「別れる」

この答えは、彼にとって相当ショックだったようだ。数年後、離婚するときにその話を蒸し返されたくらいだから。

「オレの体だけが目当てなの?」と聞かれ、「うん」と元気に答えたこともあった。
もちろん、体だけではないけれど、セックスできなくなったら一緒にいる意味がないと当時は考えていた。

当時は、と言ったけれど、白状すれば今も基本的には同じかもしれない。ただ、そういうことを言うと、世間の人に呆れられると学んだから言わなくなっただけ。

「どうしてそれほどセックスが重要なの?」

女友達にそう聞かれたことがある。なぜかはわからないけれど、私は昔から思っていた。
100回好きだというより、1回必死でセックスしてくれ、と 。言葉ではどうにでも繕える。だが、セックスすればわかるのだ。相手が私をどう思っているか。

「でも、ものすごくセックス好きの男なら、誰が相手でも一所懸命、感じさせようとすると思う。それを愛情と勘違いすることもあるんじゃないの?」

女友達は鋭いツッコミを入れてくる。うーん、でも違うのよ 。愛あるセックスと、セックスのためのセックスとは。後者が悪いとはいえない。そんなセックスに救われることも人生には多々ある。

だけどこちらが真剣に惚れているなら、相手の気持ちも手に取るようにわかるのだ。
それがセックスを重視する理由なのだと思う。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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