KAMEYAMAⅢ~vol.24 彼女の欲望が怖い

 

よく肉食女子と言われるが、実際に女性の欲望は強くなっているのだろうか。私の実感からすると、20代半ばまでは女性はそれほど欲求が強いわけではないと思う。実際、恋愛なんて必要ないと言い切る若い女性は少なくない。

ただ、アラサーより上の年代になると話は違ってくるようだ。

「結婚を考えて一緒に住んでいる女性がいるんですが、彼女の欲求がだんだん強くなってきて、ちょっと困っているんです」

健太さん(33歳)の彼女は同い年。つきあって1年たったところで同棲を始め、半年が過ぎた。

「お互いに仕事が忙しくて、なかなか会えなかったので、同居に踏み切ったんです。最初はうれしくて、ふたりの休日が合ったときは、一日中、エッチしまくっていました」

いいセックスをすればするほど、女性の快感は高まり、深まっていく。彼女は、セックスのよさに目覚めてしまったのだろう。欲望もどんどん強くなっていったそうだ。

「女性はそうかもしれませんが、男の快感って単純なんですよね。彼女を満足させるためにひたすらがんばるしかない。彼女は欲望が強くなっていて、同居して三ヶ月たつころには毎日せがんでくる。『疲れてる』と言うと、『じゃあ、動かなくていいから』と乗っかってくるんです。うれしいですよ。うれしいけど本音では体がつらい。彼女のほうは睡眠時間が削られても、性欲が満足できれば生き生きしてる」

それほどまでに求められるのは、男としては幸せだろうと思うが、彼が言うように、実際には体力的にきついのかもしれない。こういうことはお互いに譲り合うしかないのかもしれないが。

「だからって週に何回と決めてしまえるものでもないですしね。先日も彼女が生理中だけどしたいというので、バスルームでがんばりましたけど、僕、血を見るとダメなんですよね。結局、彼女は満足しきれなくてため息をついていた。そういうことが続くと、彼女と結婚して大丈夫かなあとも思う。彼女の欲望についていけるかどうか」

以前だったら情けないこと言うなと一喝してしまったかもしれない。だが、いろいろな男性の声を聞いていると、確かに性的に強い男性ばかりではないし、男女間で欲望のギャップがありすぎると亀裂が生じる怖れもあるとわかる。

お互いをより理解するためにも、一度、ちゃんと話してみたほうがいい。そう言うと,彼も深く頷いていた。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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