KAMEYAMAⅢ~vol.15 いけないと思いながらも

 

男性が婚外恋愛に走るには、女性同様、いろいろな背景がある。浮気は男の甲斐性と言われたのは昔の話。男たちも、今はいろいろ悩んでいるのだ。

「結婚当初はそれなりに仲がよかったんですけどね、子どもがひとり産まれ、ふたり産まれするうちに、妻は強くなりましたね。もちろん、母としてはよくやってるなと尊敬しますが、女として見ることができなくなっていった。向こうも同じでしょうけど」

忠伸さん(46歳)は苦笑しながらそう言う。同い年の女性と結婚して16年、中学3年の長男、小学校6年生の長女がいる。

「いつのまにか妻と心が通い合わなくなっていた。5年ほど前、会社が危機的状況にあって、毎日リストラの恐怖に怯えながらサービス残業でつらかったとき、妻につい愚痴をこぼしたんですよ。そうしたら、『優秀な人はリストラされないわよね』と冷たく一言。励ますような口調ではなかった。暗に僕が優秀じゃないと言いたかったんでしょうね。それ以来、妻には何も言う気がなくなって」

会社はなんとか持ち直し、忠伸さんもそのときの苦労が認められて部長という立場になった。それでも妻は、家計簿を見つめてはため息をつくのだという。

「そんなとき、仕事関係で知り合った3歳年下の女性と個人的に会うようになったんです。いけないと思いながらも深い関係をもってしまい、そろそろ3年になります」

相手にも家庭がある。ゆっくり会えるのはせいぜい月に1回。それでも忠伸さんは、彼女と出会う前に比べると、心穏やかに、そして前向きに生活できるようになったという。

「生活をともにしていないせいもあるとわかってはいるけど、彼女はいつでも僕の味方をしてくれる。お互いの心をさらけ出すような話ができて、なおかつ体の相性もいい。彼女に会う前、僕は5年以上、セックスレスだった。妻に拒絶されていたんです。妻はもともとセックスが好きではないようで」

セックスもしない、会話もろくにない家庭で、給料だけを求められる夫。なんだか気の毒な話ではある。

「不倫がいけないのはわかってる。だけど、僕にとって唯一の心安らげる場なんですよね。正当化する気はないけど、こうやってなんとかがんばってる男たちって、今の世の中、案外多いんじゃないでしょうか」

忠伸さんの言うとおりで、男たちが求める「婚外恋愛」は、かつてとは大きく違ってきている。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

人はなぜ不倫をするのか 亀山早苗(著)

発売日: 2016/8/6
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