KAORU sta ~ vol.16 ツナガリあえない

 

ほんの数年前。ぱったり会わなくなった男から3年ぶりに電話がかかってきた。

「素敵なお嬢さんに会いたくなりました。電話を下さい」何回もセックスをしたのに、最後まで“わからなかった男” からの声が留守電に残されていた。最後までわかりあえなかったが為に“わかるまで” もう一度シタイと思ってしまうのがあたしの悪い癖。体は交わしているのに、心を交わしていないのが、一番哀しいから。哀しい終わり方をしたくない為に何度も男と交わしてしまった。あたし達は体を交わしながら最後まで結ばれることはなかった。あの頃のあたし、男の触り方で、声の感じだけで、男の気持ちがわかるほど開いていなかったから。だって、あたし完全に“閉じて”いたんだもの。

あたし達は夜に逢い、会話をするわけでもなく、男の部屋にいき、セックスをした。男は部屋に入るなり、玄関にたってあたしの靴を脱がせ始め、そしてキスをする。「脱いで」男の言われるままに、玄関にたったまま、服を脱ぎ始める。男はいつも待てないらしく、あたしの服を脱がせ始めながら、体を触りはじめる。玄関で全裸になったあたしを男は浴槽につれていき、後ろに回りながら体を洗い、あたしに触りながら確認する。「どこが感じるの?」あたしは恥ずかしくて答えられない。男は後ろにたったまま、あたしの乳首をつねりながら再度確認する。さっきよりも強い口調で。「どこが感じるの?」男の問いにあたしは最後まで答えられなかった。浴槽での前儀が終わったあとは、寝室に連れていかれセックスをした。あたしは男があたしのことをどんな目で見ていたのか?そしてどんな気持ちであたしに逢っていたのか?最後までわからなかった。

哀しい結末になる前に携帯電話の番号を変えた。

今、考えると男は相当な遊び人だった。セックスも凄くお上手だったハズ。それでも、男とのセックスはあまりイイ記憶ではない。身体は交わしているのに、ツナガリあえない。そんな愛の病気にかかっている2人の夜は、ただ寂しいだけだもの。

 

 

ちつ☆トレ 荻原かおる(著)

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