KAMEYAMAⅢ~vol.17 女には理解できない男の下心

 

いくつになっても、男には「微妙な下心」というものがあるのだそうだ。それは若いときと違って、性欲と直結というものでもないらしい。もちろん、根っからの女好きという人もいれば、ある程度の年齢になれば女性を「女」と意識しなくなるという人もいる。 それでもおしなべて、男は「女という存在を無視できない生きもの」らしい。

「変な意味ではなく、僕は女性が好きなんです」

にこにこしながらそう言うのは、会社経営者の和雄さん(60歳)。笑顔が若々しい。

「どうせ食事をするなら、女性と一緒のほうが楽しい。男同士だと仕事の話に偏って、うまいものもまずくなるよね(笑)」

浮気の経験がないわけではないが、家庭をないがしろにしたことはない。なぜなら、妻のことも大好きだから。

「週末によく、妻とランチしたり買い物に行ったりするんだけど、僕、無意識のうちに他の女性を見ているらしいんです。妻には『あなたの女好きは年をとっても変わらないのね』と怒られて。だけど、これって本能じゃないかと思うんですよね。女性だってついつい男を見ちゃうことはあるでしょ」

ないわけではないが、女性がふっと男を見るのは、その男が好みのタイプだからだ。ところがこういった男性の場合、タイプに関係なく女性を見つめていることが多い。妻にとってみれば、愉快なことではないだろう。

「それで怒られると,今度は意識過剰になって、見ないようにしようと思いながら怪しい目つきで見てしまう」

見たからといって、その女性とどうにかなりたいと思うわけではない。仕事関係の女性と食事に行っても、特に落としてやろうと思っているわけではない、と彼は言う。

人間は、性別にかかわらず、男性性と女性性の両方を持ち合わせているという。和雄さんは女性性が強いのかもしれない。だから女性と一緒にいるほうが心地いいのではないか。もちろん、あわよくばという下心もなきにしもあらずなのだろうけれど。

「確かに下心がまったくないと言ったら違うかもしれない。ただ、行動に移す気はほとんどないんです。それは若いときとはまったく違う。若いときは、自分のペニスに支配されているような気がしていましたから。今は、下心を自分で楽しんでいるという感じかもしれませんね」

男性の「下心」も、年齢によって変化する。ただ、いくつになっても女性に興味が尽きない男性も世の中には多い。このあたりが女性の感覚とは微妙に異なるようだ。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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