KAMEYAMAⅠ~vol.20 男の自信の有無
男たちと性について話していると、おもしろいことに気づく。
やたら自分に自信があるタイプと、やたら自信がないタイプにはっきり二極化されるからだ。
「いや、僕はごく普通です」
なんて男はほとんどいない。
「歴代の彼女は、僕のセックスにけっこう満足してると思いますよ」
と言う男の言葉を聞くと、つい反抗心がむらむらとわき起こってきてしまう。
「何を根拠にそう言ってるの?」
「だって、みんな『よかった』って言うもん」
根拠はそれだけかい、と突っ込みたくなる。
女性は相手への気遣いから、たいしてよくなくたってそう言うものだ。それに気づかないから、彼はおそらく自分のテクニックや、ひょっとしたら大きいかもしれない如意棒に頼って、精進していないに違いない。
一方、極度に自信のない男も根拠がない。
「アレも大きくないし、早く終わっちゃうし。どうせ自分なんて……」
と、ただいじけているだけ。
いずれにしても、男たちがセックスについて語るとき、そこに相手の女性の反応をきちんと見ているとは思えない言葉ばかりが並んでいる。 あくまでも「自分のテクニックが」あるいは「自分のアレが」優れているかどうかしか考えていないのだ。
しかも、そこにはテクニックにしろペニスの性能にしろ、基準値がない。だから何に比べて「僕は優れている」のかわからないはず。
「彼女が喜んでいたから」
「彼女がイッたというから」
早く終わってほしいから演技する女性なんて、世の中にはたくさんいる。
そう言うと、男たちは青天の霹靂みたいな顔をして、ため息をつく。
「騙されてるってわけですか?」
いや、それが女の優しさなのだよ、と私はしたり顔で言う。
ひょっとしたら、その彼女は、「セックスが下手なこと以外は、いい人なのよね」と思っているかもしれない。だからつきあい続けているのだ。
最後に男たちは言う。
「女って怖いですね」
彼女があなたとセックスしたい、いつも抱かれたいと思えるようになるために、もっと細かく彼女の反応を見て、観察して研究しなければいけない。彼 女と他の女性の感じ方は違うのだから。自分の男でなければ、そうやって説教できるもの。女性たちが彼以外の男たちを教育していけば、巡り巡って、細かく観察してくれる男とつきあえる日がくるかもしれない。
著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき 亀山早苗(著)
亀山 早苗 (著)
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