KAMEYAMAⅡ~vol.04 結婚したとたんにセックスレスに

 

結婚して10年たつ知人A子が、ある日、「実はつきあっている人がいる」と、自分が陥っている苦しい恋を打ち明けてくれたことがある。
そのときは内心、「あんな優しいダンナさんがいるのに、どうして?」と思った。おそらく私は不審そうな顔をしていたのだろう、
彼女はため息をつきながら言った。

「彼を好きになったのは私がいけないと思ってる。ただ、前提として、実はうち、結婚してから一回もエッチしてないのよ」

これには驚いた。結婚前、つきあっていた2年間にも、ほんの数回しただけだという。「ただ、夫は精神的に頼りになるし、そのときは心からこの人と一緒にいたいと思ったの。今だって夫のことは好き。夫がなぜエッチしたくないのかはよくわからない。一度尋ねたけど、『とにかくそういうことが好きになれないんだ』と言われた」

彼女自身、それほどセックスに慣れていたわけでもないので、そういうものかと思って一時はあきらめていた。

「だけど最近、四十歳を前にして、なんだか体が疼いてしかたがなかったの。そんなとき、彼と出会ってしまった。エッチするのは恐かったけど、してみたらとってもよくて……」 それで恋人と離れられなくなってしまった。
相手にも家庭がある。それでも、お互いに心身ともに必要としあっていると感じるという。離婚して再婚することも考えた。
だが、相手には子どもがいる。自分の親も、今の夫を気に入っているし、夫も何くれとなく親の面倒を見てくれる。エッチを除けば、夫としては完璧に近い。

「それに彼と再婚したって、家庭がうまくいくかどうかはわからない。恋人関係だからいいのかもしれないでしょ? だからお互いに
いけるところまでつきあっていこうと決めたの。夫は仕事人間だし、もともと共働きだからばれる確率は低いと思う」

結婚したとたんにセックスしなくなる「未完成婚」は珍しくない。
もともとセックスに重きを置いてないタイプなのだろうが、そこに結婚したという達成感が加わって、する気がなくなってしまうようだ。

「子どもがほしくて夫を襲うように迫ったこともある。それでも夫はしてくれなかった。私はみじめで泣いてばかりいたわ。あのころに比べれば、今は自分が満たされているから、夫にも優しくできる」

セックスだけ外で調達、というと身も蓋もない言い方だが、こういうありようも、しかたがないのかもしれないと心底思う。

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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