ラブリーポップ公式マガジン

STD kinen

現役風俗嬢が送る人生ルポ

「今ナマでいれてーんだよ!」とかいう瞬間

最近、いろいろなことが恥ずかしくなってきました。

仕事柄、「もうこんな濡れてんじゃん」とか、そういったシチュエーションには否が応なく遭遇せざるえないのですが、呈よく濡れてたら「よかったああ〜場がしらけなくて!」と安堵、濡れてなかったら「濡れろ濡れろ〜!」と思念波を自らの下半身に送ったりして忙しい。そういう状況下では、恥じらいを差し挟む間はなく、むしろ、感じている姿を見られなれていないお客さんを「イヒヒ」と内心思いながら凝視してる時に、そのエロ目線に反応して、「見んといて・・・」とかゆったりしたらもう大変、嗚呼!私がよく使ってる予定調和上の恥じらいやない、ホンマモンの恥じらいが今ココにおますやないか、と大衆演劇風に感動、例えそれが50過ぎの心身ともに油の乗り切った好漢であったとしても、いや、それだからこそ、そんじょそこらのメイドより萌え磁場を発するのであります。そういう純粋理性批判恥じらいを見るにつけ、働けど働けど我が恥じらいがつるべ取られてもらい水、じっと手を見る、と自らの性的恥じらい不足を嘆き悲しんだりするのですが、別の次元では恥ずかしくなりっぱなしなのな。

何が恥ずかしいのかというと、関わってる活動の性質上、STD(性感染症)がらみの知識が吹き溜まったり、仕事でも自分と客の健康を尊重するために、予防を促進&啓発ったりしているのですが、なんか口を酸っぱくして言い続けている自分が、とても恥ずかしい。恥ずかしい?や、どうなのか。うーん、うまく説明できないな。コント形式で例えるなら、おっかさん、お粥ができたわよ、ごほごほん、いつもすまないねえ、と粥たいらげてみれば、椀の底には「セーファーセックス」の文字。やってられるかああああ――――!暴れるおっかさん。おっかさんキック!おっかさんパンチ!ワンツーワンツー!絶妙のコンビネーション!ウィナー!おっかさんウィナー!つか元気じゃん!でもひとしきり暴れたあとぶっ倒れる、それが今の私です。

その覆面おっかさんの正体をあかすと、「やーナマでやりてえよなー」、みたいな気持ち、時には、「先輩、ナマでやりたいっすよ!」であって、また、「なんでナマでやっちゃいけないの?」とつぶらな瞳でききかえす輩なのでした。

そんな気持ちを抱えつつ、しれーと予防啓発を訴えている自分が、たまらなくアンビバレンツで恥ずかしく、お客様に出しても恥ずかしくない羞恥プレイなので、ここらでつっこんでおかないとな、という次第です。いやいや、どう考えても、性的な健康は大切なわけなのですけど。その根拠となる事実、現実は、ゆるぎなくある。STDにかかる人は増えている。自分と性的な関係を結ぶパートナーにとって、一夜のアバンチュールの相手にとっても、セーファーな行為をすることは、とても大事すわ、やっぱり。自分の健康を守ることは、性的に限らず、関わる多くの人にとっても大事で、何よりも、単に、自らの身体を大事にすることは、「生きる」ということと同じで、この考えにも、なんの疑問も差し挟むつもりはないっス。

そんな気持ちで、ソトヅラはゴリゴリにSTD予防を掲げているわけなのですけど、なんつのか、スローガンや、正しいモノイイというのは、繰り返していくと、空々しくなる、というか、擦り切れていってしまうものだ、と感じているのです。そして、それぞれの人の、事情や、こまかな気持ちを、意図的ではないにしろ、無視したり、検閲したり、ダメなものとしてうっすらと封印していってしまうのではないかと心配になる。私にとってのそういった類の気持ちは、「今ナマでいれてーんだよ!」とかいう瞬間、衝動だったりするわけですが。

行政や、おっきな組織、それに限らず、ちっちゃなグループ、それは、友人同士や、家族も含むと思うのだけれど、また、自分の中でも、「一度決められてしまったルール」が、一人歩きして、否定しなくてもいいものを、自動的に否定している、ということは、とてもよく起ることです。本来、人と人がよりよい生を生きるためにあるはずのものが、その逆のことをしてしまっているっていう。本当に大事な目的を、たまに立ち止まって、ちゃんと見る、更新しなおす、ということが大切なのかな?

つわけで、なんか、告白でした。告白?あ?おめ、結局何がいいたかったのって話で。そんな割と基本なことを今更、とか。えーと、やっぱり、風俗嬢という今の状況だと、妊娠や病気の予防上、コンドームナシのセックスはおいそれとできないのですが、その気持ちは大切にしたい、ということですか。あーあ。つまんね。それとは別に、もうすでに自分の性生活には、切っても切ってもSTDの3文字がくっついてくる金太郎飴的様相を呈しており、なんかヤダな、みたいなのもあります。そんなこんなで、いったいセックスってなに?生きるとは?とか、三十も半ばにもなって思春期並みに迷いつつ、取り組んでおりますこのコラムですので、少しでも、皆さんのセーファーでハッピーな性★ライフに貢献できることを望んでおります、なんだ、この締め。今週で終わるわけじゃないです、来月も続きます。



Stanley

田中課長

風俗風来坊。マンガ好き。日記書いてます。どんぞお立ち寄りください。(※開店中)


TAGS: 恋愛とセックス


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