STD kinen
現役風俗嬢が送る人生ルポ
STD検査にいく（2）
前回、性感染症四天王といわれている（いわれてません）「ＨＩＶ」「梅毒」「淋病」「クラミジア」の検査を東京観光がてらに受けた田中。結果が出ないと帰れないからと、滞在を伸ばす口実にしつつ、ついに一週間後、ファイナルアンサーの日がおとずれたわけです。オーディエンス、テレホンとかは使えないらしいので、再度保健所に出向きました。
「結果はこちらです」
受付をすませ、通された小部屋で差し出しされた用紙を覗き込む。ここに、わたくしの、２年間の性生活の性感染症的答えが。穴があくほどに凝視。４つとも「陰性」のしるし。ふうう。一息つきました。みのもんたに睨まれたカエルのような一週間をすごしたわりには、あっさりとした幕切れで、ちょっとさみしかったので、心の中のアンパイヤーに「セェーフ！セェェェーフ！」を叫ばせ、ささやかにお祝いしました。
でも、今回大丈夫だったからって大船にのっかったように安心しないようにしようー。自分の出来る範囲で、セーファーな行為をココロがけるのはもちろんだけど、それでも、病気にかかるってホントにひょっこりひょうたん島。もし、ＳＴＤに感染していたら、早めに気がついて治療したいし、めんどくさがらずに検査を受けてこうー、しまってこうーと、股間を引き締めつつ思いました。
あと、「今自分はＳＴＤに感染してる可能性は低いなー」みたいな安心は、セックスをする上でも、リラックスする要素のひとつのような気がするので、そういう意味でも、検査に足を運ぶことをオススメしまっす！
ここで、保健所こぼれ話。帰り際、検査サービス向上のための、アンケートを渡されたんだけど、その項目に目が釘付けになりました。まず、性別。
■１）男 ２）女 ３）その他（ ）
普通のアンケートではまずありえない性別『その他』の選択がさりげなく。ああ、そんなことされたら、私、なんだかあなた（アンケート用紙）にココロを開いてしまいそう…。よろめきながら次の項目、『あなたのセックスの対象は？』に目を落とすと。
■１）同性のみ ２）異性のみ ３）主に同性 ４）主に異性 ５）異性同性同じくらい ６）その他（ ）
ああん！ 芸が細かい！ こういうのがテクニシャンって言うの!? そして『同性のみ』がトップに！ そして、またやっぱり『その他』がキラリと光ってる！
『過去６ヶ月の相手はどんな相手でしたか？（複数回答可）』。
■１）恋人などの特定のパートナー ２）知り合いや友人 ３）その場限りで知り合った人 ４）性風俗店等で働いている人 ５）性風俗等の客 ６）その他（ ）
はあっ。もう駄目。そんな、普段攻められない箇所を。偏ってるけど、公け的に無視されがちな、でもごく普通にある巷の性の現状が反映されたラインナップー！
そんなわけで、メロメロになったあたし。こういうのに弱いの…。数年前のＨＩＶ予防啓発パンフには、「感染を防ぐには特定のパートナーとしかセックスしないことです」等が、なんの注釈もなしにどどーん！と書かれてるのみだったのを思うと、涙ナシではいられない感じです。もちろん、「検査を受けた上で、パートナーとしかしない」のは、有効な予防手段のひとつではありますけども。なんなんでしょう、この多様さへの心配りがヤリ手女将並み。たぶん、ＨＩＶ問題に力を入れてきたゲイパワー系活動の結果とか、行政側も、性感染症の感染拡大を止めるためには、カマトトぶって妙な「道徳」を持ち出しては逆効果だ、という反省があるのかもしれないです。
はっきりゆって、たんにアンケートですし、その真の意図はわからないのだけれど。でも。ここには、個人の性的な選択、趣味が、同列に並べられていて。それを希望をもって曲解するのなら、つまり、「いろんな立場の人がいろんな形で性にアプローチしていても、性的な健康は守られるべき」、もっと拡大解釈するのなら、「どんな性生活を送るかの自由は、その人自身に委ねられてて、他人に優劣つけられるもんじゃない」っていうことだと思うんですよ。さらに、「公共機関は、その趣味云々にかかわらず、必要な人に等しくサービスする存在だ」ってことも付け加えたい。行政全体として、そんなイイ方に向かってるとは思えない今、ささやかな前向きさをかもし出す解釈を、私はあえてとっていきたいすわ。
とまあ、あまり見たことがない、超リアルラブライフを鑑み作成されたぽいこのアンケートにカン違いかもしれない感銘をいたく受け、「こ、こここれ、ももらって、いいいいいスかね？」とドモリ気味興奮気味にたずね、「は？ まあ…いいですけど…」と怪訝な顔をされつつ、後生大事に持ち帰った田中でした。
田中課長
風俗風来坊。マンガ好き。日記書いてます。どんぞお立ち寄りください。（※開店中）
