ラブリーポップ公式マガジン

Midnight Talk

恋愛、結婚、セックス。そして不倫からセクシャリティに至るまで。男女関係・セックス・性について書き綴るコラム。

浮気

 「島耕作」(雑誌「モーニング」1983年連載開始)が、まだ課長だったときに、
彼の上司(50代男性)だったと思うが、妻の浮気に気づくシーンがあった。
その時、その上司が脳裏で呟くことが、やけに記憶に残っている。

 「3ヶ月もセックスしてないなら、○○子が浮気するのも仕方ないか、、、」

それから、その上司は取り乱すこともなく、
その夫婦の危機に冷静に対処していく、、と言う展開だったと思う。
その冷静さがなんとも言えなかった。


私の奥様について語ることは、殆どないのだが、
結婚10年目のころ、彼女にある事件が起きた。当
時まだ、インターネットが珍しい時代に、新しい物好きな私の家には、
すでにインフラがあって、当時、趨勢を誇っていたAと言う
プロバイダーのお世話になっていた。家にパソコンは一台しかなく、
私と彼女が共用していた。ちゃんとIDを分けて、
メールもそれぞれ使っていて、互いにプライバシーを尊重して
Passwordも別となっていて、私は彼女のPassは知らなかった。
ただ、そのセキュリティ機能もサーバー上で閲覧する上で有効だったが、
Localにダウンロードしたときは、誰からも丸見えになってしまう、、
と言う穴があった。そんな穴のことなど、私も知らなかったが、
ある日、意図せず、彼女のメールを読んでしまった。


どうやら、ネット上に、たまたま出身高校のフォーラムが立っていて、
そこで、初恋の男性に再会してしまったようだった。


話しの上では、彼のことを知っていた。
当時、二人は全校注目のカップルだったらしいが、
進学する彼女と就職を選んだ彼は、それを機会に別れてしまったようだった。
高校生の恋らしく、観念的で自虐的な恋だったようだ。


メールは、日を追う事に盛り上がり、すでに「恋文」と言っていいものだった。
それを読みながら、イケナイことをするときの、ドキドキしている自分がいた。
また、当時は私も若く、当然、嫉妬心などもあったし、
普段、奔放な私を諫めるがごとくしていたマジメな彼女が、
世に言う「不倫」(しかもダブル不倫) に進んでいこうとしているのが、
許せないでいた。


しばらく、静観していると、二人とも会う算段を決めたようで、
日時もハッキリ決まったようだった。
会ったら、必ずセックスしそうな勢いだった。


彼女が私に言う「○月○日に同窓会があるんだけど、言っても良い?」
私が用意していた答えは「あぁ、もちろんだよ。たまにはゆっくりしておいでよ」


なぜ、そのように答えたのだろう。
日々ウキウキして、やけに私に優しい、幸せそうな彼女がいた。
自分の悪行の数々を振り返ってみても、
浮気準備をとがめるようなことを言う権利なんかない、と一瞬思った。
私が、一言でも問いつめたら、マジメな彼女は、
すぐにすべて白状して私に詫びることは分かっている。
自己嫌悪に陥り、自分を責めるタイプだ。
そういう部分があまりにも脆いのは知っていた。


 私が考えなくてはならないのは、
彼女が自分の人生を納得して生きられるかどうかだ。
ここで、旦那面して止めることはできるだろうが、
きっと一生彼女は、心の底で悔いを残し、
ゆくゆく私を恨むようになるかも知れない。
なぜなら、このチャンスは、二度とないからだ。


 会って話しだけで終わるかもしれないし、
会ってすぐにホテルに行ってしまうかも知れない。
いずれにしてもそれは、彼女が悔いのない選択をした結果だから、
それを支持しよう。どのような選択をするかは、彼女の自由だ。
(今は、違う考えをしている。しかし、根拠は違えど、やっぱり支持する、、)


その前日の土曜日、「同窓会は、キャンセルになったって、、」
と彼女がぽつりと言った。理由はそれらしいことを何か言ってたが、
忘れてしまった。後から、分かったことだが、
妻子持ちの彼の方からドタキャンしてきたようだった。
「逢わない方がいい」と言うことらしい。


夕暮れのキッチンに佇む彼女の、肩が落ちた後ろ姿が侘びしかった。


 「同窓会なんか、またあるさ。来週末は、たまには旅行しよっか」
と声をかけた。彼女のほろ苦い物語の最終章だった。
(そういう落ちなら、最初から盛り上げるな、、と彼に対してちょっと怒っていた自分に驚いた)




Stanley

工藤忍

Club Deep Blue」主宰。 愛しい人のSexyな生き方 。3,000人を超える女性との出会いを通じ、経験や見聞きしたこ とをベースに、様なSexualityに触れながら、恋愛道を語る。


TAGS: 恋愛とセックス


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