
第7回 「曖昧女に振り回されるラテン」
近所に住む、30代日系ブラジル人Sくん。私の茶飲み友だちだ。「日本の女の子、いい加減にしてほしいよ!わけわかんない」と頭を抱えている。この一年で3人に振られたという彼、脈があるんだか無いんだかわからない日本人の曖昧な態度に振り回されている。本音と建前の境界線がわからないのだ。彼だけでなく、日本で暮らすラテン圏の男たちが同じ悩みを持っているらしい。
「メールしましょうよ、って言われたの。アドレス教えるでしょ?メール来ない。次会った時、ねぇメールしないの?って聞く。『するする〜』って言う。やっぱりメール来ない。それだけじゃないよ。Sさん優しいとか、ご飯食べましょうとか言われて、これはきっと僕のこと好きだなって誘うでしょ?『そんなつもりじゃなかった』って断られる。あー意味わかんない」
なんて不憫なSくん。あなたの気持ちはよくわかる。私も同じように、日本の男に振り回されてきた。「サシ飲み」と「デート」の違いが未だにわからない。飲み会の後に「おつかれさま」とメールしてくるのは、事務連絡だからなのか?恥ずかしいからなのか?こっちが教えてほしいぐらいだ。 「それに日本人って、簡単に「かわいい」とか「やさしい」「かっこいい」って言うしね」と呟くと、彼は「そう!そうなんだよ!」と前に乗り出してきた。
私がアメリカに住んで驚いたのは、よく人を褒めることだった。日本人の褒め方とちょっと違う。友達に対しての褒め方と、恋人へのそれとでは言葉が違うのだ。友達には、「髪切った?いいね」「その服、よく似合ってるね」など、外見のちょっとした変化を褒めることが多い。恋人には、「きれいな目」「髪がいい香り」「今日はいつもよりビューティフル」と、ロマンティックな言葉をかける。ブラジルも同じ。ところが日本では、誰に対しても「すごい」と言う。「かわいい」に至っては、友達の新しい服、犬、キティちゃん、いつでもどこでも連発する。
落ち込む彼を「日本人にもわかんないんだから」と励ました。日本人だって、「スカートかわいいって褒められたんだけど、どういう意味かな」と小さな言葉に一喜一憂している。インターネットには、「脈ありメール診断」なんてサイトがわんさか。好きなら好きと、はっきりしやがれ!社交辞令を真っ向から受け止め、自爆しまくっているSくんのほうが見ていて気持ちいい。
そもそも、かわいいだの、すごいだの、気軽に連発する女は周りから良く見られたいだけ。「え〜すごい、きゃ〜おいしい、わ〜かわいい!って女は最初から相手にしないことだよ。不器用だけど本当は優しいとか、素直な子もいる。ただ、日本じゃ浮いてる存在かもしれないけど」と言うと、彼は唸った。
日本でうまくやるには、本音と建前を使い分けることが大事。建前を鵜呑みにしないことは、もっと大事。私は、「ストレートすぎる」と何度怒られたか。他の女が「すごーい」と表面的な褒め言葉を並べる中、「髪、短いほうが似合うよ」「その靴、かっこいいね」と、私にしてみたら表面的な褒め言葉を「気がある」と勘違いされたこともある。Sくんは、見た目が日本人でもブラジル人で片言の日本語だから許される。純日本人の私はもっと大変だ。

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