第43回 セクハラ

不思議なもので、なぜか外来に同じ病気や症状の人が続くことがある。
たいていこういう時には共通した心理的な気づきがある。
今回は、暗い表情をした抑うつ状態の女性が立て続けにやってきた。
聞けば、全員セクハラ被害だ。

セクハラって、とてつもない侵害行為。
女性性・男性性への侵害行為と言える。
あ〜も〜、私、怒っちゃって、文章も怒りモードになりそうです。


こんな私にもかつては若い頃があり、さんざセクハラを受けた。
今となっては軽くかわせることが、どうしてあの頃かわせなかったのか、
患者さんとして来院した彼女達もどうしてかわせず、
抑うつになってしまったのか・・・?


実際は年齢の問題ではなくて、
「若い頃」とは、「社会のあるコミュニティでの新人」と同義だ。
新人は先輩諸氏(上司)に教え導いてもらわなければ、
コミュニティ内で生き残るための、具体的術を学べない、
道も切り開いてもらえない、コネクションも紹介してもらえない、
可能性がある。 つまり生存がかかっている。


セクハラは、脅迫まがいの取引みたいなもの。
言葉に出さず、その自覚がなかったとしても、無意識の底には互いの取引がある。
「生き残り術を授けるかわりに従え。私が優位だ。支配する。」
女性は、生存をかけて、自分の意志の一部、
女性としての尊厳を売り渡すことになる。
月日を経ることで、セクハラをかわせるようになっていくのは、
ひとつには脅されたってちっとも怖くない生き残り術を獲得したからだ。
人を支配したい男が世の中にはまだ大勢いるんだな〜。
若い女性患者さんの話を聴きながら意気消沈しつつ、久しぶりに思い知った。
卑怯なんだよね、やり方が。あ〜ヤダヤダ。


しかし、関係性とは一方的に成り立つものではなく
、実はどちらもが役割を担っている。
される側も、尊厳を売り渡すか否かの選択取引を迫られている。
生存と尊厳を天秤にかけて、損得勘定をどこかでしていることもある。
自分を大切に思えなければ、自尊心を容易に売り渡してしまう。
セクハラされた女性を責めるつもりはまったくない。
「あなたは自分を大切にしていますか?」と、
よくよく自分に尋ねてほしいだけ 。


自尊心を大切にできなかった若い頃を振り返り自戒をこめて、
新人女性さんにエールを送りたいなと思った外来の日々でした。




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