VOl.10 辞令が下った私は、ある会社で販売を始めた。

どうして、その会社に決めたのかという決定的な理由はない。女性のお客様相手の仕事で、なるべく密なコミュニケーションを必要とする分野がいいかなと思った。大手の会社がいいとは思わなかった。正社員のほうがいいなと思った。もう季節は春になりかけていたし、色んなワガママが言える立場じゃないと思った。

私がやりたいことを許してきた母に「フリーターにはなるな」と言われていた。「何のために大学に行かせたと思っているの」おお!初めて聞いたかもしれない「親らしい」発言にちょっと感動して、それには従おうと思った。

「もし、この会社がだめだったら、養護教諭(保健室の先生)の資格を取ろう」と思い、資料を取り寄せたりした。もともと子どもは好きだし、今まで学んできたことも生かせるし。販売員か養護教諭か。どちらに転んでも、ラブリーポップで仕事をするには役に立つと思っていた。

結局あるメーカーに採用が決まった。

養護教諭になるという選択肢は、アリかなとも思うがやっぱり逃げだったのかもしれない。そんなことは露知らず、就職が決まったあとも、そして未だに!母は「保健室の先生にならなくていいの?」と聞いてくる。学生時代に子ども関係のボランティアに精を出していて、卒論では性教育について書いていた私を知っているためか、母は私が大きな夢を諦めたと思っているのかもしれない。(お母さん、ごめん。私はもっと大きな夢を持っていたのよ。正直に話せなくてごめん。)

社会人としての一歩を歩き出した私。そして、社会を舐めきっていた私。

新入社員研修を終えて、売り場に立った私は、1時間もしないうちに大泣きしていた。

本当は恥ずかしくて理由は書きたくないんだけど… 簡単に言うと礼儀知らずだったから。売るとか接客する以前に、先輩に対する態度があまりにもひどくて、先輩にブチ切れされたんですね。

その時に社会人の洗礼を受けたというか、何というか… その先輩には本当に感謝をしていて、叱ってくれて有難かった。「人との付き合い方ってそうなんだ」と気付かされたし(遅い)、「ラブリーポップ以外の職場」を見下していた感があったんだと思う。それでは、ラブリーポップが見下されても、何の文句も言えないと言うのに。

あの「ブチ切れ」「大泣き」がなければ今の私はない。その後、諸先輩方に可愛がってもらえたのは、あの先輩からの洗礼があったからだ。でなければ、「生意気なだけの小娘」に成り下がっていたに違いない。

その先輩以外にも、仕事のモチベーションの持っていき方や仕事の考え方といった仕事哲学や、営業担当との付き合い方や他メーカーの販売員との付き合い方など、いろいろ教えてくださった先輩が多かった。その仕事を辞めてから9ヶ月が経つけれど、メールが届いたりする。「元気にしてる?風邪なんてひくんじゃないよ。また飲みに行こうね」母親ほども年齢の離れた先輩からそんなメールが届くと、「あの会社に入って仕事ができてよかった。」と思う。ひとつひとつの経験が、今の私をつくって、成長させてくれているんだと思える。

でも、本当の転職先をまだ言えていない。それは心残りなことだけど、仕方のないことかもしれないし、不義理な気もする。堂々と私たちの仕事を報告できる社会にする。私の目標のひとつだ。


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