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おとなごっこ

男と女・セックスについてのコラム

人との繋がりをエネルギーで考える

 

もう十年近く前になるかと思いますが、書店で何気なく手にした一冊の本から、人と人との繋がりを解くヒントを学んだことがありました。それは、ジェームス・レッドフィールドという人が著した「聖なる予言」という本でした(ラムサ著「聖なる預言」とは違います)。タイトルだけだと、どこか宗教的というか、超常現象に近い匂いもしかねないのですが、内容はそういうものではありません。仏教徒の方も安心して読めます。

 作品は物語で構成されていまして、主人公が身辺に起る偶然の一致に導かれるように旅をし、そこから人との関わり方を学び、末は人間の理想的な未来を垣間見るというものです。こう書くと、なんか難しそうですよね。けれど、いわゆる旅物語ですので、読んでみれば楽にその世界へと入れると思います。

 その「聖なる予言」のなかで、主人公が目に見えないエネルギーの存在を知る話があります。生きとし生けるものすべて、それこそ大自然の草木や風雨に至るまで、そこには目に見えないエネルギーが存在していて、常にそのエネルギーは異なる物質間を行き来してるというのです。わかりにくいですね、すみません。少し具体的に説明してみましょう。

 まず、人は誰も、自分の中に一定のエネルギーを持っているそうです。メーターがついてるわけではないのでどの辺が基準量かはわかりませんが、ある基準値があって、それを超えると気分が良く、下回ると気分が悪くなるようです。けれど悲しいことに、人間はそのエネルギーを常に消費しつつ自分の体内で作ることができないんですね。ですから、周囲の何かからエネルギーを補給しなければならない。それは、恋愛かもしれないし仕事かもしれない。笑いかもしれないし、瞑想かもしれない。いずれにせよ、人は常に、エネルギーを摂取するようプログラムされている、というわけです。

 喧嘩をすると、勝った方は気分がいいけど負けた方は悔しいですよね。気分が悪いです。この場合、喧嘩を媒介に、勝った方が負けた方のエネルギーを奪い取っているのだそうです。恋人同士の会話で、「今日のきみはとても素敵だね、大好きだよ」なんて言われると、めっちゃ嬉しいでしょ。そういうとき、言葉によってあなたは、相手からエネルギーを与えられているということになります。よく子どもを叱る親がいますが、必要以上に子を叱る親は、子どもからエネルギーを奪い取っているとも言えるわけです。

 植物の世界でも、草花に「すくすく育てよ」と話しかけながら肥料や水をやると、他の植物より成長が早いという話もあります。この場合は、人が植物にエネルギーを与えているということになるのでしょうね。そう、人と人だけでなく、このエネルギーの素敵なところは、対自然でも成り立つということです。つまり、人として理想的なエネルギーの摂取方法は、周囲の人から得ようとするのではなく、大自然から得ることであると、この物語は結んでいます。

 さて、長々と書籍の紹介じみた話をしましたが、男と女、いや、人と人との関係を考えたとき、この「エネルギー」という概念は、とても興味深いものだとぼくは思っています。とっても良い子ぶった物言いになりますけど、気持ち良く人生をまっとうしたいのであれば、他人のエネルギーを奪い取って生きるよりは、ぼくは自分のエネルギーを周囲に分け与えていけるような存在になりたいです。自分の中のエネルギーを与えるということは、減ってしまうのですから、論理的にはそこで気分が悪くなるのでしょうが、そうじゃないように思えるんですね。

 自分のエネルギーを与えたとき、相手の顔には笑みがこぼれます。その笑顔は、ぼくの心を温かくしてくれる。とても気持ち良くしてくれる。だからぼくは、人が喜ぶことをするのが大好きです。「便利屋」とか「雑用係」なんて言われることもあるし、「よっ!名幹事!」とおだてられることもありますけど、どんなときでも、みんなが喜んでくれてるという事実がぼくを幸福にしてくれます。

 ふとしたことでいいんです。彼氏と喧嘩しちゃったとき、「あ、今、ちょっと彼のエネルギーを奪っちゃったな」って思って欲しいんです。奪っちゃったら、その分は返してあげましょうよ。星の数ほどいる人間の中で、縁あって出逢ったふたりなんですから、それくらいの優しさは持ってあげましょうよ、ね。

 優しさといえば、映画「がばいばぁちゃん」の中で、がばいばぁちゃんがいいことを言っていましたっけ。「本当の優しさっていうのは、人に気づかれずにするものなんだよ」ってね。自分を見る目、周囲を見る目、その目に、ほんの少しの余裕と知識を与えてみてはいかがでしょうか。




Stanley

神崎ヒロイ

1962年東京下町生れ、在住。98年、ウェブで創作活動開始。2002年、大人が自然 体で愉しめるコンテンツを目指して、サイト「ヲトナごっこ」を立ち上 げる。セックスや恋愛をテーマとしたコラムを中心に、小説、エッセイ、ポエム 等の著作物から、写真や、文字と写真を組み合わせた作品等を公開中。05年夏、 学生時代の音楽仲間とおやじバンド「4-BLOOD」を結成。現在そちらにご執心中 につき、創作活動は停滞中。


TAGS: 恋愛とセックス


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