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Choise

心が変われば身体に変化がおこる! 風子さんがオーガズムをえるまでの記録

私たち人間は、流れていけばいいんである

 


  その父くらい年の離れた男性と、なんどかファミリーレストランで会った。 その人が外国に留学していたときの話や、それからも何度も旅行にいっている話。 その人の若い頃の話、なんかをとても楽しく聞いた。

なぜかその人とは、疲れないで話が続いた。 私は、誰かと話しているとたいていドっと疲れてくる。 人の目を気にする昔の癖が抜けないからだ。 その場における自分の役割を演じてしまうからだ。 たとえば、その場が暗ければ明るい道化役、その場がにぎやかならシニカルな批判者、 という感じで役をこなしてしまう。 それで、疲れはててしまうんだ。

でも、その人とはなぜか自然でいられた。 自然に楽しかった。 ありのままの自分でいられた。 不思議だった。 こんなに年が離れているのに。

そして、語学学校に行くあいだに、その人と話をするうちに、だんだんと留学しようと いう気持ちになっていた。 その人の知り合いに、留学の書類の手続きを頼んだ。

セッションはしていなかったが私の性のコーチである彼とは、メールでやりとりをしていた。 ある時、セッションルームに行った。 あそこにいけば、私はまた性の快感をもとめてしまうと思い、ためらったが行くことにした。 あの部屋で私はすべてのしがらみや苦しみから抜け出して、すべての力をぬくことができる。 普段は息苦しいと感じながら生きているのに、あの部屋に入ると空気がきれいで胸がスーっとする。

いつかはここから、彼から卒業しなくちゃいけないのはわかっていた。 私は彼が好きだった。 彼に執着していた。

どうすることもできず、どうしたらいいのかもわからず、また服を脱いで、ベッドにうつぶせになった。 彼がやさしく私の体をマッサージしてくれて、その感触がだんだん繊細になってきて、 またオマンコがあつくなってきた。

「もうこんなのはいや!」と、私は裸のまま、転びながらもベッドから抜け出し、トイレに逃げ込んだ。 苦しかった。 自分が彼に溺れているのはわかってた。 性欲にとりつかれ、抜け出せないのもわかっていた。 出口はないように思えた。 トイレからぐったりしながら出てきた私を、彼はやさしく抱きしめてくれて、落ち着かせてくれた。

彼からはついに決定的な言葉がでてきた。 「人は、出会ったらいつかはお別れしなくちゃならない」と。

悲しくて、悲しくて、悲しかった。 いやだ、いやだ、ずっとこのままあなたに抱かれたい。 もっともっといろんなこと教えてもらいたい。 もっともっといやらしいことしてもらいたい。

私は気づいていた。 いくら素晴らしいオーガズムを味わっても、いくら性的に刺激的なことを続けても、 いつか私は満たされてしまう。 性的なことはいつかは飽きてしまう。 そして、日常の生活で、私はひとりぼっちだ。

彼とは、今回の人生ではパートナーにはならないんだ、とわかっていた。 私には私のパートナーになる人が他にいるってことも、なんとなく感じていた。

服を着て、ぼーっとしていると、彼は 「前に約束したからバイクに乗せてあげる」 と言ってくれた。

よくぞ、目の前であんなに取り乱して、絶望している人間を見たあとで、 こんなふうに普通にしていられるなあと思った。 もう、私の理解を超えているひとだなと思った。 すごいや。かなわない。

私はたいていの男の人には勝っているとそれまで思っていた。 でも、心の底から、すごいやこの人は、と思える人と接してきて、だんだん考えがかわってきた。 自分が知らないすばらしい世界があるんだ、 自分が知らない秀でた人々がいるんだ、と。

彼はよく、自分は水先案内人だ、と言っていた。 今思うと本当にそうだ。

流れる川を見ていて思う。 流れている水は、私たち人間だ。その魂だ。 水の小さな粒子がひとりひとりの人間で、それらはいっせいに流れていく。

前を流れる水と、後ろを流れる水。 前にはザァーっと流れ落ちる急流がある。 前を行く水は、後ろの水よりも先に急流を下る。 でも前を行く水は、先に急流を下るなんていうすごい経験をしたからといって、えらいだろうか。 水はえばるだろうか。 彼が全くえばらないのも、どんな状況でも立ち向かう勇気があるのも こういうわけなのか、と思った。

彼は私の先を行く人だ。 彼は、生きていれば必ずおこる「急流くだり」を先にやっていて、どんなものか知っている。 そして、彼は、自分の後ろを流れる水たちに、 「君の進む先に急流があるよー!でも流れていれば大丈夫だよー!」と 教えているんだ。

私たちは、私たち人間は、流れていけばいいんである。 歌にもあるよね。

『川は流れてドコドコいくよ、人も流れてどこどこいくよー♪』




Stanley

桜庭風子

セクシャリティーに関するコラムニストの卵、 現在35歳。 30歳をすぎてからいきなり人生が変化し出し、我ながらとてもダイナミックな体験をしてきました。 もっと多くの人が、セックスや性と自然に触れ合えるようになることを願っています♪


TAGS: 恋愛とセックス


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