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Choise

心が変われば身体に変化がおこる! 風子さんがオーガズムをえるまでの記録

 今、自分が感じていることがすべて

 

あとで知ったことだが、そのセラピストの男性は普通のセラピーとは別に、 ラブ&セクシャルセラピーという活動に取り組んでいる人だった。 セクシャルな触れ合いを通して、人の心に押さえ込まれた感情を解き放ち、 新しい自分(本来はその人にそなわっていた自然な自分)と向き合うことを 支援するセラピーをしていたのだった。

当時、私は毎週のようにその男性の所へ通った。 彼とはメールもやりとりした。

この頃、ひどく体と心の具合が悪くなるときもあった。 無意識の底が抜けて、悪夢や幻に苦しんだ。 あれは、パンドラの箱が空いたのね。 普段はおさえられている無意識の世界の蓋が開くと、中からとんでもないものが飛び出てくる。 このコラムでは書けないようなものすごくグロテスクな妄想に、毎晩のように襲われた。 昼も夜の区別もなくなり、現実と妄想がグチャグチャになった。 このまま私は狂ってしまうのか、とも思った。

現実の世界は、少しずつ変化していった。 私は子どものころからとてもやりたかった、「ケーキ教室に通う」という夢を果たした。 たかがケーキ教室に通うくらいで、夢を果たすなんておおげさな、と思われるだろう。 だが、私は母親の干渉がこわくて、今までケーキ教室にいけなかったのだ。 教室に行く前は、お腹がいたくなるくらい緊張した。 母親に禁止されていることをすると、私はこんな状態になってしまうのだ。

この歳になって、ケーキを作るなんて浮ついたことをしていいのか、 バチが当たるんじゃないかと妄想におびえていた。 私がやりたいことほど、母親は禁止していた。 私がやりたいことをやり遂げ、自分に自信を持ったり、誇りをもつことが許せなかったんだろう。

その男性に応援してもらいながら、 「ケーキ教室に行ってきた!とても楽しかった!」というようなことを話して、 「そうか!よかったな!」と共に喜んでもらうことで私は、私の中にあったタブーを乗り越えることができた。

たかが、ケーキ教室と人は思うだろう。 でも、自分のやりたいことを禁止される悲しさ、くやしさ、否定されるおそろしさ、なんかは味わってみないとわからない。 たいていの人は、記憶の底に封印してしまっているからだ。 その封印を解いて、私は自由になろうとしていた。

セラピールームには通い続けていた。 その男性に体をマッサージをしてもらっている時の、あの気持ちよさ。 彼の太い腕、たくましい胸、意志の強そうなほお、思い出すだけで胸があつくなり、オマンコが熱くなる。 そう、私はほれちゃったんだ。その男性のこと。

好きな男に体をさわられて、興奮しない女がいるだろうか。 彼が私のことを好きかどうかなんてわからない。 でも、私は彼が好きだ。 だって、こんなにやさしくされたのは初めてなんだもん。 と、まるで、思春期の女の子のように心をときめかせながら、セラピールームに通ったっけ。

お金を払って体を気持ちよくしてもらいに行くなんて、と当初は思っていたが 正直言って、風俗に通う男の人の気持ちがわかった。 もう、どうすることもできないんである。 その人にだまされてるんじゃない?(もう一人の私がささやく) だまされたっていい。(もう一人の私が答える。) だって、あのセラピールームに居る時間は、私が生きていくのにどうしても必要なんだもの。 私はあそこにいると、とっても幸せなんだもん。

こうして何度かセラピールームに通ったある日、ついに彼の腕にしがみついてしまった。 あなたとセックスしたい。 あなたのことが好きだ。 私とつきあって。

でも、答えはノーだった。 気持ちよくはしてあげられるけど、自分には奥さんと子どもがいる。 セックスすると、その世界がこわれてしまう、と言われた。 そうか。 でも、これじゃあ蛇の生ごろしだ。 私のこの熱くもえちゃってる子宮は、あふれちゃってる液体はどうしたらいいの? こんなに熱くさせておいて!ひどい!

ああ、書いていてオマンコが熱くなってきちゃった。 ジーンとするなあ。 いい思い出だ♪ 忘れられないステキな思い出だけど、これを書くことで手放そうと思っている。 いやな思い出も、いい思い出も、しがみついていたら前に進めない。 そういうことを教えてくれたのも、彼だった。 彼は、私のことを愛してくれていた。 私の目を、力強く見つめてくれた。 全身全霊で、私と接してくれた。 私も彼を愛した、全身全霊で。



あの頃、彼とやりとりをしたメールを読むと、自分の混乱ぶりがわかる。 無意識からあふれだすあらゆるもので、心も体も混乱していた。 ようは、頭がいかれちゃったんである。 それまで、かしこく、かっこよく生きてきた私が、そんな余裕もなく、乱れて乱れまくったんである。

現実と妄想が交じり合う中、私を現実に導いてくれたのは、驚くことに性欲だった。 気持ちよくなりたい。それだけが生きるすべてだった。 あのセラピールームの部屋で味わう時間、味わう感触が、私を生き延びさせた。 性への欲求が、私を現実の世界に引き戻してくれた。

あるとき、彼が1冊の本を貸してくれた。 あるAVの監督さんが書いた本だった。 なにげなくよんでみた。 そこには、今までのAVに対する見方を変える何かがあった。 AVって言えば、ただ単に男の人を視覚で楽しませるもので、 女にとって残酷な状況でセックスして、男の征服欲を満たしたりして、 ひどいものだと思っていた。

その本を書いた監督さんの考えはちがっていた。 素人の女性に、その人が性についてどう思っているか聞いたり、 オーガズムを体験したことのない人が、オーガズムを体験した後で変わる表情なんかを撮っていた。 オーガズムを体験した女性は、とてもおだやかで幸せそうな表情だと書いてあった。

人間にとって、性とはなんなのか。 それをテーマにし、追求している監督だった。 本を読みながら、私は涙が出た。 監督に会ったり撮られてオーガズムを得た女の人が、うらやましかった。 私もオーガズムを体験して、今の苦しみから解き離れたい。 そう強く思った。

そして、彼から勧められていたバイブやローターを買ってみようと決意した。 彼は、バイブっていうものは女性の性感を訓練するためには、とてもいいものだと言っていた。 それまでは、そんなものはけがらわしい、いやらしい、みにくいものだ、と思っていた。(ハハ♪) でも、最近は女性が運営している会社で、パッケージもかわいらしく、しかも、 性のことを真面目に考えている会社があるのを知った。

そして、私の手元にはついに「オナニー初めてセット」みたいなものが届いた。 頭の中はまた混乱してきた。 こんなのつかわなくちゃいけないの?本当に?なんで私が? でも、もういいや。 深く考えずに気持ちよくなってみよう。

彼とのセッションは続いていた。 なんと、バイブやローターを使って、オマンコの開発、体と心の開発をしてもらったのだ。

彼にそっと優しく指でオマンコをいじられると、背中にビリビリと電流が走った。 ひどい時には大声をあげて、まるで体中に痛みが走ったようだった。 体中を蛇に這いまわられているような感覚もした。

もう私は性欲だけの人間になっていた。 彼だけがこの世界のすべてだった。 「もう、彼にすべておまかせしよう。」 そう思った瞬間、ふと体の力が抜けて、 バイブで中をかきまわされながら、彼の太い腕で抱きしめられていた私は 体がのけぞり、頭がのけぞり、目も白めになって、よだれを流しながら、イッた。

人間があんなにのけぞることができるなんて知らなかった。 なにが起こったのかわからなかった。 自分が一回転して、クルっとひっくり返ったみたいだった。 内側と外側が入れ替わった、みたいな。 自分という手袋を、裏表ひっくり返したような感覚だった。

ああ素晴らしい体験をしたわぁ、なんてその場で思えるほど、なまやさしいものではなかった。 ああ、気持ちよかったぁ、なんてすぐ感想をいえるものでもない。 気持ちよかったわん♪なんてすぐに言えるのは、とても小さいオーガズムだ。 もしくは何度もオーガズムをむかえている人ね。

あれがいつのことだったのか、覚えていない。 性の世界に溺れると、時間や日付などの感覚がなくなってしまう。 そんなものは、どうでもいいものだ。 すべては、この体が、この心が感じたこと、 今、自分が感じていることがすべて。 それが真実なんだ。




Stanley

桜庭風子

セクシャリティーに関するコラムニストの卵、 現在35歳。 30歳をすぎてからいきなり人生が変化し出し、我ながらとてもダイナミックな体験をしてきました。 もっと多くの人が、セックスや性と自然に触れ合えるようになることを願っています♪


TAGS: 恋愛とセックス


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