ＴＡＯ
セックスレス
TAOを訪れる女性たちで、セックスによって十分な快感が得られないオーガズム不全、に次いで多いのが、「セックスレス」の悩みの相談です。セックスレスというのは、「特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシァル・コンタクトが一ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合、セックスレス・カップルのカテゴリーに入る」、１９９４年に日本性医学会でこのように定義されています。
もう諦めてしまっている女性、あるいは二人が納得してセックスをしない、という人もいるようですが、TAOを訪れるのは、「したくてもできない」という悩みを抱えた女性たちです。相談できる相手もなく、一人で悩み苦しみ続け、ようやくTAOにたどり着いたという女性たちです。女性たちの悩み苦しみの背景は実に様々です。百人百様の物語があります。誰もが、とても切実なのです。
「何で、こんなに近い人なのに、思いが伝わらないのかしら」
美由紀さん（３１歳）は、何度も何度もその言葉を呟いた。四年ほどの交際を経て、一年半前に結婚した。夫は３６歳で歯科医師。美由紀さんが歯科技工士として、夫の歯科医院に勤め始めた頃から付き合い始めた。それまで美由紀さんは他の歯科医院で勤めていて、医院に出入りする製薬会社員の彼がいた。医者の妻になれる。それも魅力だった。「だから・・・」と茶目っ気たっぷりに話す。「でも、主人のことは好きなんです」
交際中から、今の夫はセックスに淡白だった。ダブって付き合っていた彼も淡白だった。でも、それが美由紀さんの心と体に「問題」として浮上することはなかった。「女友達からよく聞かされたのだけど、オーガズムのこと、すごくいいのよって」。でも、彼女はその感覚はまだ経験したことがないという。「好きって言われながら抱き合ったり、じゃれ合ったり、そうしながらのセックス、私はそれで幸せだったから、友達の話を聞いていても、へぇ〜って感じで」
結婚当初の二ヶ月間で三回。それ以後今までまったく無い。セックスが無くなって半年ほど経った頃、生理の終わりから排卵日の間、すごくほしくなるようになった。女性用のエロティックな雑誌を買ってきて、オナニーをする。「なんだか、自分が惨めで・・・・・」
開業医の夫が忙しいのは、理解している。「私のこと好き？」とか、「愛してる？」と、夫に投げかける。「当たり前やろ」決まって同じ言葉で夫は答える。「だったら、どうしてしてしてくれないの？」と、訴えたことがある。「分かっているやろ。俺はものすごくしんどいんや。そんなことするんやったらゆっくり休みたい」と、言葉を荒げる。「私だって、すごくしたいときあるんよ」こんな言葉を口から吐き出さなければならないのか、と思うと涙混じりになる。「お前はセックスしかないんか。変なんちがうか」。もしこれ以上、突き詰めて言い合うと、夫婦の仲が音を立てて崩れ落ちそうな予感がする。
「何で、こんなに近い人に思いが伝わらないのだろう。近ければ近いほど、私の思っていることが伝わらないの」
二人のいきさつを十分聞いているので、効果のないことを承知のうえで言ってみた。「二人でよく話し合ってみたら」。美由紀さんはキリッと私を見つめて、それから大きく息を吐いた後、こう言った。
「これってなんなの、こんなに近い関係なのに、Injuさんの方がずっと遠いでしょう。それなのに触れ合っているだけで、遠いほうが伝わったりするわけ？ヒーリングの最中に、ふっとそんなことを考えていたの。自分の体はこんなにも感じるんだ、それが分かったから。たぶん、今の私に必要なのは快感だと思います」
夫とのセックスに満たされない心と体を、誰かに抱きとめてもらいたい。セックスが無くなってから、美由紀さんの体がセックスを求め始めた。色々悩んでみたけど、頭で考えれば考えるほど体が反乱を起こす。快感に身をゆだねていると、頭の中がしだいにとりとめなくなってゆく。心が楽になる。
人が誰かに相談するときには、大体は８〜９割は結論がでていて、残りの１〜２割の迷いが、誰かの助けを必要としている。各人各様にたどり着いた結論が、正しいのかそうでないのか、私には分かりません。でも、彼女たちは、より幸せに生きていることだけは確かなようです。私は彼女たちが選んだ生き方を、後ろからそっと見つめているだけです。
Inju
[AGE]忘れました
[STYLE]１７４cm ６４kg スリムで筋肉質
[FAVORITES]現代美術/山歩き/倖田來未/コリンヌ・リシェヌ/吉行淳之介/ウロ・クレー/ドゥビッシー
[SEXUALITY]Bisexual
[PROFESSION]セクシァル ヒーリング TAO/セックスセラピスト（自称）/気功・東洋療法士
