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生理からオナニーまで、獣フェミニストの毎日

私は電話の受付員です。

お客様からかかってきた電話をとり、話を聞き、まとめ、レポートを作成する。 決裁が必要なことは私には権限がないので決裁権のある人に替わる。 専門的な話は、たとえ分かることでも、私には権限がないのでこれまた話す権限のある人に替わる。 どれだけ専門的な知識をつけても、それが間違いがなくても、説明してはいけません。 だって、権限がないから。  私はそういう補助的な仕事を派遣社員でしております。

私の働いている支社では受付業務をするのは99%以上、女。 これは偶然ではなく、よほどのことがない限り、男は受付には採用されないからでした。

受付は、「男の人は他に仕事があるなら、ちょっとねえ。ウチでなくても」と言われる仕事なのです。  さて一方、管理職はほぼ全員が男。 あまりにはっきりと男女構成が非対称でクラクラします。  私はそういう男女の偏った職場で働いています。

 時に、受付は「先ほどの女性が聞いたと思いますが‥」と性別で言い表されます。 名前を言われないのはまだしも、「受付の者」とさえ言われないのでした。 私は「女性」と言い表されると、自分がしゅうーっと消えていくような気がして悲しくなります。

 ほぼ100%、女ばかりを補助的な仕事である受付に採用しておいて、個人名でも、担当している仕事の名前でもなく「女性」と呼ぶ。それはあまりに無自覚に行われており、怒るというより、ただただ悲しくなってしまいます。

  こんなこともあります。  お客様から無茶な苦情が入りました。 社員に電話を替わってもらっていると、 年配の男性社員が近づいて来て言います「(電話の相手は)オバサンか?」。 オッサンの頭の中では、訳の分からない苦情を言うのは「オバサン」と決まっているようです。

 しかし、私の受付経験からすると、男にも女にも無茶なことを言う人はいます。 むしろ、どちらかというと無茶な苦情を言うのは男の人のほうが多いです。 だから、苦情を言っているのが男の人ということはままあります。 で、電話の相手が男の場合、事実のままに「オバサンじゃないですよ。男の人ですよ」というと、オッサンは話が続かなくなって、つまらない様子になり、そのうちその場を去っていきます。  こういうやりとりはこれまでに何度もありましたが、「無茶な苦情を言う人=オバサン」という公式がそのうち消えるわけでなく、相変わらず「無茶な苦情を言う人」は「オバサン」とされているのでした。 年を重ねた、女は貶められるのでした。  

また、こんなこともあります。 女のお客様を対応した後、オッサンが「女の人は論理的に考えられないからなあ」と女の人である私にポツリ。 私に嫌味が言いたいわけではないようです。 目の前にいる私に対しても、「論理的に考えられない」と言っていることに思いが及ばないだけのようです。  こういうことがあると、つい「男の人は想像力がないからなあ」と思ってしまいそうになります。同じようなことをやり返してはいけませんね。  結局、年を重ねていなくても、女は貶められるのでした。  「男は○○」と、男の低い評価を聞くことはないのに、女は言われるのでした。

 もちろんイヤなことばかりではありません。たくさん女の人がいるので、あまり友だちにならないタイプの女の人とも友だちになれます。 20歳以上年の離れた女の人とも友だちになれました。 そういうところはとても楽しい。 さほどギスギスしたところもがないのも、ラクだし、派遣なので時間で割り切れるし、総体的には「いい仕事」です。

けれど、時々ある、オッサンの女を馬鹿にした言動にはガッカリします。 たまたまこの種の事が重なると、ほんとに仕事がイヤになるのでした。

そんなある日に観たテレビドラマ「グッジョブ」(NHKで放映。DVDをジェネオンエンタテインメントが販売)。 もともと市川実日子さん好きで観だしたドラマですが、溜飲がすうぅーっと下がりました。 中堅建設会社の、営業ではなく営業補助の、総合職ではなく一般職の、女性社員たちが主役。

みなそれぞれに素敵なのですが、中でも「ハイパーOL仮面」の上原草子さん(松下奈緒)は、まともにコミュニケーションを取らない「日本男児(21世紀の石原裕次郎、徳重聡が好演。意義がよくわからなかった21世紀の石原裕次郎選抜大会だが、よく徳重さんを見出してくれた。これ以上ないキャスティングです。「グッジョブ 」のために21世紀の裕次郎が選抜されたとさえ思えます)」たる男性社員に「ありがとう」の大事さを教え、女性社員とのコミュニケーションの重要性を体験させる。 最年長の女性社員(まだ30歳代)を「お局さん」という男性社員には、「爺(じい)って呼びますから」とお局発言を禁止。

といっても、糾弾調なわけではなく、ベースは誠意を尽くしてハートが通じる、コミュニケーション重視。  

「グッジョブ」を観てると、変わらないなんてあきらめず、私がいろいろ考えたり、感じたりするように、おっさんもいろいろと考え、感じているのを尊重しながら、言いたいことは「伝わる!」と熱意を持って伝えることを忘れちゃいけないな、とあきらめぎみの我が身を反省。  

 あんまり働いてない私にしても、起きている時間の1/3は職場にいるんですもの。

「会社は友だちを作るところではない」けど「敵を作るところでもない」。 「コミュニケーションがとれればもっと会社はよくなる」。

 そうだよね、コミュニケーションは重要!あきらめちゃダメだよね!

   けれど疑問もあります。 ドラマの営業補助の女性社員たちは結局、正社員。 しかし、世は派遣社員など非正規雇用があまた。 派遣の場合は自分が直接雇用契約を結んでいるわけではない会社で働くわけで、職場で誠意を尽くしてもどこまで雇い主にハートが通じるかは疑問です。 正社員にしても、サービス残業の強要があって働いた分を全然まともに払ってもらえないなんて時は、誠意を尽くしてハートを通じさせている場合ではなく、ちゃんと闘わなくてはならないと思うのです。 だから、誠意を尽くしてハートが通じるには疑問も感じてしまいます。

たぶんこれはどっちかに決まることではなく、どちらも重要なのだと思います。 人も物事も変わりうるとあきらめず、コミュニケーションを忘れない。 けれど、ちゃんと闘わないと変わらないことがあることは悟って、闘うことを恐れない。

もうすぐ2007年が終わりますね。

年末年始、リフレッシュできるといいですね。 年末年始は仕事の皆さーん! 私も年末年始は仕事です。 身体と心の調子をこじらせないよう気をつけて頑張りましょう!

それでは、よいお年を




Stanley

もりもり☆アイアイ

大学卒論で女性器と女性との関わりをとりあげた、通称マン卒(「<性>にどう抵抗するか:<女性性器>を出発点にして」)を提出。研究者になるつもりが、進路変更。某資格取得のため真面目に勉強中。「あくまで実践 獣フェミニスト集団FROG(Feminism and Radical Onanie Group)」コアメンバー。


TAGS: 女性


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