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生理からオナニーまで、獣フェミニストの毎日

どうやってちゃんと生きていくか?

前回から始まった【「あそこ」じゃなくなる、マンコとの付き合い方】の続きとして、「マンコで表現する」方法について取り上げる予定でしたが、まだ準備中ですので、【「あそこ」じゃなくなる、マンコとの付き合い方】は今回お休みさせていただきます。

かわりに今回は、9月末に出版された、『Dearキクチさん、──ブルーテント村とチョコレート』(いちむらみさこ著、キョートット出版発行)という本を紹介します。

ブルーテント村というのは、大都会の大きな公園の中にある、ブルシートで作られたテントが集まった場所。著者のいちむらさんもテントを建て、公園で暮らしています。公園で出会ったキクチさんという女性をはじめ、たくさんの公園に住む人たちとの暮らし、またその中でいちむらさんが思ったことや考えたことが『Dearキクチさん、──ブルーテント村とチョコレート』には書かれています。イラストもたくさん載っている素敵な本です。

この本を紹介するのは、私が生きる上で大切にしたいと思っていることが、いちむらさんの日々の暮らしや文章の書き方に現れているからです。

私が生きる上で大切にしたいこと──それは、なるだけ人を枠組みにはめず、また自分も枠組みにはまって可能性を抑えつけてしまうことなく、自分自身の力やそれぞれの人の持っている力を信じ、人ときちんと関わりながらも、自立して生きていくこと。

そのためには私は、自分が女ということを引き受けつつも、女というところに閉じ込もらず、閉じ込められずに生きていきたいと思っています。私にとってフェミニズムとは、そういう生き方のことです。

でも言うのは簡単だけど、やってみるのは難しい。

知らず知らずのうちに、決められた枠の中に自分や他人を閉じ込めているということはよくあることです。 世の中これだけ情報に溢れているから、お金さえあれば、何でも手に入りそうに思えるし、何でもできそうにも思える。けれど実際には、欲しい情報は探してみると、案外、見つからない。

コンビニの新製品やブランドの新作商品情報はすぐに見つかっても、自分にとって大切なことや本当にしたいことは分からなかったり。選んだつもりが選ばさせられていたり。 案外、狭い枠の中で場当たり的にウロウロしているだけだったりする。

私も「枠にはめたくない。枠を外れたい」といいながら、枠にやっぱりどっぷり浸かっていると思います。

『Dearキクチさん、──ブルーテント村とチョコレート』を読んでいると、そんなやっぱりどっぷり枠に浸かっている自分にハッと気づかされることが度々あります。

例えば、私は、公園のテントに住む人たちのことを「ホームレス」、つまり家がない人たちだと思っていました。しかし、いちむらさんの本を読んでいると、二階建て木造とかマンションとかそういった家はないけど、決して家がないわけではないと気づきました。 私が考えるような家はないけど、そこにはテントという家があり、暮らしがあります。20年ぐらい住んでいる人もいたそうです。 私の暮らしにあるものがあるだけではありません。捨てられた物を拾って融通しあい現金が無くても暮らせるネットワークがあったり、私の暮らしにないものもあります。

いちむらさんは、人によっては「危ない」とか「気持ち悪い」とかといった言葉で片付けてしまうかもしれない出来事をそういった言葉の枠にはめこまずに、感じ、表現しています。

テレビや新聞などでは、公園に住む人たちは、かわいそうな人、自分ひとりでは生きる力がない人と描かれるか、もしくは不真面目な人だとか、勝手気ままに生きる人だと描かれるかの両極端だと思います。

けど、『Dearキクチさん、──ブルーテント村とチョコレート』に描かれるのはそのどちらでもありません。それは「ホームレス」という枠ではめた報道からは見えてこないものです。

私は、『Dearキクチさん、──ブルーテント村とチョコレート』に、人を枠組みにはめず、また自分も枠組みにはまらず、人の持つ力を信じ、人と関わりながらも自立して生きていく姿勢を学びました。

いちむらさんは、絵を描く会を開いて公園内外の人と絵を描いたり、公園に住む女性と出会うために「女性のためのティーパーティ」を開いたり、自分や周りの暮らしを変えるきっかけを自分から作っていきます。こういったアイデアも素敵だと思います。

公園に住む人の話と聞くと、自分には関係ないと思ったり、人権問題だと構えてしまったりするかもしれません。しかし、『Dearキクチさん、──ブルーテント村とチョコレート』は、生き方を見つめ直すきっかけを与え、他者に対する想像力を忘れさせないための本です。置いている本屋さんは少ないですが、ネット通販でも買えるので、興味を持たれた方はキョートット出版のHP(http://kyototto.com/)へ。

今、いちむらさんの住む公園では、行政によるテントの移動などが行われ、刻々と状況が変化しています。詳しくは、いちむらさんのブログ(ブルーテント村とチョコレート:http://bluetent.exblog.jp/)を読んでみてください。




Stanley

もりもり☆アイアイ

大学卒論で女性器と女性との関わりをとりあげた、通称マン卒(「<性>にどう抵抗するか:<女性性器>を出発点にして」)を提出。研究者になるつもりが、進路変更。某資格取得のため真面目に勉強中。「あくまで実践 獣フェミニスト集団FROG(Feminism and Radical Onanie Group)」コアメンバー。


TAGS: 女性


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