KAMEYAMAⅣ~vol.25 いくつまでセックスできるか

 

最近、アラフォー独身女性から、「セックスっていくつまでできるものですか」と、立て続けに訊かれた。取材を通してわかっているのは、70代でも気構えと健康さえあればできるということだが、彼女たちが求めているのはそんな先を見越した言葉ではないらしい。

「この先5年間、セックスしなくても大丈夫なのかなあ。更年期が始まったら、もうセックスなんてしていられなくなるのかなと思うと不安で」

39歳のジュンコさんは具体的にそう話してくれた。最後にしたのは5年前。その後、つきあっていた彼と別れ、ちょうど仕事が忙しくなったこともあって、誰ともつきあっていない、誰ともセックスもしていない。マスターベーションすらしていないのだという。「しなくても今は元気です。ただ、雑誌などを読むと、40代になったら女性ホルモンが激減するというでしょう? その後もずっとセックスしなかったら、もうできないんじゃないか、と……」

この5年間は、恋人もいなかったので、セックスしたいと思わなかった。「恋はめんどうくさい」とも思っていた。ただ、この先5年間、またしないでいると、いざ相手ができて「したい」と感じたときに、できないのではないかと考えてしまうらしい。

ある医師によれば、「月経がある間はセックスしなくても大丈夫。ただ、更年期になって月経が乱れたり間遠になったりしながら閉経したとする。そこから何年もしてなくて、たとえば60代でいざしようと思っても、なかなかむずかしいものはあるかもしれない」とのこと。

膣は閉経後、使っていないと劣化していくのだそう。女性ホルモンの作用によるものだ。使わずに置いておいたゴムタイヤがぼろぼろ崩れていくのと同じように、固く、しかも脆くなっていく。濡れる濡れないは条件反射によるところも大きいし、定期的にしていればそれほど劣化せずにすむらしい。

確かにジュンコさんの言い分は、不安を感じてやむを得ないものなのかもしれない。しかし、今は閉経したらHRT療法で女性ホルモンを投与することもできるので、それほど深刻にならなくてもいいのではないだろうか。膣を劣化させないために、適当な男とセックスするわけにもいかない。

ただ、恋やセックスは不思議なもので、遠ざかれば遠ざかるほど、「しなくていいもの」「めんどうくさいもの」になっていく。それに、どこかエッチな気分になれない、艶やかな気持ちがもてないのも、寂しくはないだろうか。これはあくまでも個人的意見だけれど。

ずっと「めんどうくさい」と思っていたら、いざ素敵なチャンスがあっても気づくことさえできないかもしれない。

誰かと濃密に心を通わせたい、「好き」という気持ちを持って密に接したい。そんな気持ちがあったら、迷わずに恋に飛び込んでみてもいいのではないだろうか。「めんどうくさい」より、もっとわくわくする楽しいことが待っているかもしれないのだから。

 

 

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

人はなぜ不倫をするのか 亀山早苗(著)

発売日: 2016/8/6
「人はなぜ不倫をするのか」。きっと少なくない人が、その答えを探している。本書はこの問いかけを第一線で活躍する8名の学者陣にぶつけた本だ。「ジェンダー研究」「昆虫学」「動物行動学」「宗教学」「心理学」「性科学」「行動遺伝学」「脳」。さまざまなジャンルの専門家が、それぞれの学問をベースに不倫を解説する。