KAMEYAMAⅣ~vol.15 怨みの感情で生きていく?

 

恋愛が終わったあと、恨み辛みの感情をいつまでも抱いている女性がいる。もちろん、男だっているだろう。ストーカーになったり、相手への嫌がらせをいつまでも続けたり。それは言語道断だが、今回は恨みの感情を出さずに悶々としている女性の話を。

マイコさん(36歳・独身)は、3歳年上の彼と知り合ってから半年、友だち関係を続けていた。とはいえ、ふたりだけで映画を観に行ったりドライブに行ったりと、デートといってもおかしくない関係だった。彼女の中で恋心が育っていく。半年たったところで、彼女は我慢ができなくなり、彼に告白した。

「彼の返事は、『ごめん。オレはいい友だちでいたいと思ってる』と。そう言いながらも、映画に行けば、『あなたの意見はいつも参考になるし、独創性があるよね』と褒めてくれる。『オレはあなたを信じてる』と言ったこともある。今は恋人関係にはなれなくても、このままつきあっていけばいつかは、と思っていたんです」

ところが、彼はマイコさんも出入りしているSNSで別の女性A子さんと親しくなっていった。A子さんとマイコさんは面識がある。マイコさんは気が気ではない。彼を映画や食事に頻繁に誘った。彼は時間が合えば断らなかった。

そのうち、SNSでA子さんがマイコさんの悪口を書くようになっていく。それに彼が同調しているのを見つけてしまったマイコさん、激怒して彼を呼び出した。

「彼、しれっと言ったんです。どうしてそんなことを言うんだ、あなたとはつきあっているわけじゃないのにって。A子にはつきあっている男性がいるんです。そのことも彼に言ってやりました。だけど彼、『それがどうしたの』と。A子は見るからに下品な色気を漂わせている女。男って、結局、ああいう女に騙される。ふたりできっと私のことを笑っているんだと思います」

結局、マイコさんと彼との友だち関係も途切れてしまった。そしてそれから半年以上経った今も、マイコさんはふたりを罵り続けている。

自分が貶められた,バカにされたと感じたとき、人は確かに負の感情をもつし、恨みも募るかもしれない。彼との関係そのものは悪くなかったのだから、いつかは恋人になれるかもしれないという期待もあっただろう。そんなふうに思わせた彼にも罪はある。

だが、結果的には終わったのだ、すべてが。だとしたら、マイコさんはやはり自分の足できちんと立ちあがって、前を向いて歩いていったほうがいいと思う。いつまでも彼とA子さんへの恨みを抱いて生きていても、決して新しい明日はやって来ない。

恋愛が終わったとき、人の真価は問われるのだと思う。彼を選んだのは自分、どういう形であれつきあってきたのも自分。すべて自分が決定したことなのだ。自分の中でどう落とし前をつけるのか。そこが人として成長できるかどうかにつながっていくのではないだろうか。

 

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

復讐手帖─愛が狂気に変わるとき 亀山早苗(著)

発売日: 2017/9/22
亀山 早苗 (著)
男の裏切り、心変わり…別れた男、不倫相手、夫…行き場を失った女の想いが向かう果て。ボンド、下剤、剃毛、暴露、破壊、尾行…実録!復讐劇の数々。