KAMEYAMAⅣ~vol.09 年下の男はむずかしい?

 

身近なところで、40代半ばになってから10歳以上、年下の男性と結婚する友人が増えてきた。再婚だったり初婚だったり、状況はいろいろだ。20歳近く年下であっても、うまくいっているケースも少なくない。ところが、もちろんあまりうまくいっていないカップルもいて、その多くは妻が悩んでいる。

「悪い人じゃないんだけど、しょせん、お坊ちゃまなのよね」

ため息混じりにそう言うのは、晶子さん(仮名)。2年前、当時30歳、14歳年下の男性と電撃結婚した。交際期間ほとんどなし。共通の友人のオフィシャルなパーティで出会い、ひとり暮らしの彼女の部屋にその日、彼が泊ってから居続けとなった。1ヶ月後には婚姻届を書いていたという。

「彼があまりにも結婚したい結婚したいって毎日、言うからその気になっちゃった」

彼女は自宅でデザイン関係の仕事をしている。彼は家業を手伝っているのだが、あまりにも「子ども」なのだとか。親の会社だからこそ雇ってもらえるのであって、とても社会に適応しているとは思えないと彼女は言う。「いいヤツなのよ、友だちにしておくには。だけど一緒に暮らすとストレスがたまる。家事ひとつできないし、やろうという努力もしない。他人と共同生活をしたことがないから、自分の思い通りにならないと、すぐふくれて拗ねて、こっちが謝るまで口をきかないのよ」 うーん。一緒に住むのはつらそうだ。彼女が家で仕事に追いまくられていても、彼は帰ってきたときに食事ができていないと機嫌が悪い。

「自分のことだけ一方的に理解してほしい、だけど私のことは理解しようとしない。亭主関白というのとはちょっと違うの。とにかく幼稚園くらいの子どもと同じ」

しかも、と彼女は声を潜める。婚姻届を書く前には数回したセックスも、届けを出したとたんしなくなった。

「僕、セックスは好きじゃないみたいだ」

とある日、唐突に言われた。彼女は性欲のもっていきどころがなくて悶々としている。 年下と結婚したと聞いたときは、本音を言えば羨ましかった。パワーあふれる若い夫と、熟した女の取り合わせ、いいなあと思ったものだ。だが、悶々とする彼女の表情を見ていると、そんなことは軽々しく考えてはいけないのだと自戒する。

30歳で子供じみている男は、おそらく40歳になっても今のままだろう。彼女がうまく手なずけていくのか、あるいは堪忍袋の緒が切れるのか、それはわからない。だが、我慢しすぎるのは心身ともによろしくない。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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