KAMEYAMAⅢ~vol.22 恋をしたい男たち

 

7,8年前から男たちが真剣に「恋をしたい」と言うようになった。未婚既婚問わずである。中でも既婚で40代から50代の男たちの訴えは意外と真剣なのだ。

「心通い合う同世代の女性と恋をして、身も心も満たされたい」

のが彼らの本音。以前のように「若い女の子とつきあいたい」わけではなく、心通い合う女性と時間を共にしたいと考えているところが、男たちの変化だと思う。

「ものすごく気になる女性がいるんです」

そう言うのは、52歳の学さん。25歳のとき職場の2年先輩と結婚した彼だが、「恋愛して結婚した」という意識が乏しい。

「誘われるままに関係をもってできちゃった結婚だったんです」

自嘲気味につぶやいた。

「結婚生活は悪くはなかったし、妻のことも嫌いじゃない。でも家庭への思いは責任だけですね。恋をしたい。50歳を過ぎてから、その想いが募っていくんです」

だが、妻しか知らない彼は、女性を口説いたこともない。確かに堅苦しい印象が強いのだ。実直を絵に描いたような。それでも口べたというわけでもなさそうだから、思い切って女性を誘ってみればいいのにと私は言ってみた。恋するとかしないとかいう以前に、女友だちがいたって悪くない。

「実は今、気になっている女性がいるんですが、社内の部下でして。彼女も40代の既婚者なんですが。下手に誘ってセクハラだということになったら、一生を棒に振ってしまう。でも彼女とふたりきりで話してみたい。そういう気持ちも強くなっていて」

学さん、苦しそうな表情になる。恋していながら、その気持ちを表に出せないまま情熱を持てあましている男の顔だ。

部署の飲み会などのときに、さりげなく話してみたらどうなのだろう。あくまでも上司として、だが彼女自身に興味があるということは匂わせつつ。

「そんな器用なことができるかなあ」

渋っていた彼だが、1ヶ月後、メールがきた。飲み会のとき、彼女がゴルフにはまっていることを知り、今度一緒に練習しようというところまでこぎつけたらしい。

恋したいと言う男は、恋している自分に酔いたいだけのこともある。まずは相手ときちんと話し、友だちとして人間関係を育んでみることが大事ではないだろうか。ひょっとしたら、それで満足して、肉体関係をもつことが憚られるかもしれない。大人の恋は、人間同士の関係で止めておくほうが楽しいという可能性もある。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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