KAMEYAMAⅡ~vol.23 夫婦だからこそできること

 

最近、私の周りで「夫婦でラブホテルに行く」ことが流行りつつある。セックスレスになりかけている夫婦には、お勧めだ。
夫婦がセックスレスになるひとつの要因は、「日常生活を送っている場所でエロい気分になれない」こと。エロい気分になれなければ、当然、セックスには及ぶこともないのだから、日常がスムーズにいけばいくほど、セックスからは遠ざかるという不可思議な状態に陥るのだ。

「うちは2,3ヶ月に1回、ラブホに行きます。2年くらい前に盆暮れしかしないような状態になって、私が叛乱を起こしたの」

奈美江さん(40歳)はそう言って笑った。結婚して10年、9歳になる双子がいる。その世話に明け暮れ、子どもたちが小学校に入るとパートで働き始めた。同い年の夫は家事や育児に積極的に関わってはくれるが、仕事も多忙なため、ふたりとも疲弊していた。セックスするより眠りたいという日常だったが、彼女は内心、悶々としていた。

「あるとき、私が『もうこんな生活、いやだあ』ってぶち切れたんですよ。夫だって大変だというのはわかっていたけど、家事や育児ってどうしても私のほうが負担が大きい。心身ともに限界だと思い詰めちゃって。そうしたら夫が私の母に連絡してくれて、母が田舎から飛んできたの。親に頼りたくなかったからがんばってたんだけど、なんだか甘えてもいいかという気分になった。『子どもたちは私が見てるから、ふたりで映画でも観ておいで』って言ってくれて。それでラブホに行ったんですよね。そうしたらなぜかふたりとも燃えちゃって(笑)」

以来、2ヶ月か3ヶ月に1度はラブホで、お互いにゆっくりセックスを楽しむようになった。夫はラブホでバイブを使って妻を何度もイカせる楽しみを知ったらしい。

「日常的にも復活しましたよ。ラブホほどゆっくり楽しめないけど、でも、セックスは大事だということで一致しているから。あのとき私がキーッとならなかったら、あのままずっとセックスレスになっていたかもしれないなあと思うんです」

これから子どもたちが大きくなれば、もっとふたりの時間が楽しめるはず、と奈美江さんは晴れやかな笑顔を見せる。
ちょっとした工夫が、夫婦の愛情を濃やかなものにしていくのかもしれない。もちろん、お互いを思いやって話し合うことが重要になるのだが。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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