KAMEYAMAⅡ~vol.21 年の差婚の落とし穴Ⅰ

 

芸能界では、このところ年の差婚が話題になっている。こういう現象は、もちろん一般にもよくあるのだが、成功例ばかりではない。

「うちは夫が46歳、私が20歳のときに結婚しました」

そう言うのは香里さん(40歳)。彼が若く見えたこともあって、結婚当初はそれほど違和感がなかったという。

「私、3歳のときに父を亡くしていて記憶もおぼろ。だから彼の中に父親を見ていたのかもしれません」
彼もそのあたりは理解してくれていた。ふたりの娘にも恵まれた。結婚生活は幸せそのものだったという。
ただ、彼女が30歳のころから夫が性的に機能しなくなっていった。
50代半ばで、それほど急激に衰えるものでもないはずだが、夫は少し糖尿病気味だったそうだ。

「それに役職についたこともあって、ストレスだらけだったみたい。
逆に私は、ちょうどセックスの深いよさを味わえるようになったところだったので、してくれない彼に不満が募っていったんです」
夫も苦しかっただろう。香里さんは、「私をこんなふうに感じる体にしたのはあなたなんだから、責任とって」と迫ったこともあるという。そう言われても、体が思うようにならないのだから、男としてはつらいだろう。

だが、彼女は彼女で、火のついた体を鎮めようがなかったらしい。
夫がそこで、バイブでも何でもつかって彼女を全身で受け止めることができれば、夫婦の間に溝はできなかったのかもしれない。夫はそうしなかった。そして、彼女は5年がまんしたあげく、浮気に走った。しかも、夫の部下と。夫は激怒し、彼女は娘たちを連れて家を出た。ただ、夫は娘たちのために生活費や教育費は今もくれているという。

「夫を裏切ったのは私だけど、どうしても我慢できなかったのも事実。年がうんと上だから、浮気くらい許してくれるかもしれないという甘えもあったのかな、今思えば」
現在、元夫は66歳。体調を崩したときは彼女が身の回りの世話を焼いている。あのときの夫の部下とは別れたが、パートで働いている職場の上司と週に一度は体を合わせる。

「私は好きな人とセックスしたいというより、セックスが合った人を好きになってしまうのかもしれない。それもこれも、セックスの快感を知ってしまったから」
とんでもない女だと彼女を非難する人もいるかもしれない。
だが、私には彼女の気持ちがよくわかる。女の性と心は、それほどに複雑なのだ。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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