IKU ~vol.10 「イク」こと自体が「悪夢からの解放」だった

 

エヌ子さんとは、彼女が26才の時にご縁があって、しばらく一緒に遊ぶことになった。とても大人しい女性だが、時々、人との距離感が測れぬグサっとするような一言を言い放ってしまうところが、小柄で色白の「ゆきんこ」のようなカワイイ印象からすると、かけ離れた行動のように見えた。ぎこちなく不器用なのだ。

 セックスは情熱的でどんなプレイでも受け入れた。すでに私と出会う前から、少しハードなSMからアナルまで何でも試して来た様子だった。グループセックス系のお遊びに興味を持ったのは、それら過去のプレイの行き詰まりの中で、他の女性がどんなセックスをしているかを知りたくなったからだった。

 激しいプレイをする割に、余韻が残らず急激に冷めていく、、まるで男性のそれのようだった。終わると同時にぶっきらぼうな話し方、そして傍若無人な振る舞いが始まる。恥ずかしさの反動でそんな行動を取るのだろうと思っていたが、自己嫌悪に近いものだと分ってきた。

 こういうセックスは、そのプレイの種類がなんであれ、お互いのプラスにはならない。毎回する度に後悔するようなことは継続すべきではない。それに気付いたころには、エヌ子さんは、複数の男女が集うパーティーにも顔を出すようになっていたが、段々周囲に嫌悪感を伝染させるようになって来ると、私としても放置しておくわけにはいかなくなる。

 何度かふたりきりで話す機会を設けたが、奥歯に物が挟まった話し方で、内容に不透明なことが多く、理解を埋めるに至らなかった。

 居心地が悪くなったのか、エヌ子さんの方から距離を取るようになった。音信不通になって、3ヶ月ほどしてメールしてみたが、「元気ですよ~」と言う返事があるだけだった。

 どこかのカップル喫茶で見かけたとか、どこそこのパーティーに出入りしているようだとか噂を聞くようになった頃には、最後にエヌ子さんに会ってから1年以上が過ぎていた。

 2年を過ぎると「○○のパーティーでは出入り禁止になったようだ」との話しが耳に入った。そんな噂を最後に、さらに半年が過ぎた。

 もうメールのやり取りもしなくなって数年が過ぎていたし、メールのアドレスさえ変わってしまっていたので、その突然届いた長文のメールがエヌ子さんからだと気付くには、十数秒ほどかかってしまった。

 エヌ子さんのメールには、自分の父親との近親相姦の話しが書かれてた。それは芽生え始めた小学生の時から始まり、高校生を卒業するまで続いたのだと言う。10年近い間に受けた性的暴行は、肉体的なダメージもさることながら、精神的に深く影響を与えていた。成熟していく自分と父との葛藤が淡々と書かれていて、痛々しかった。エヌ子さんはイケないことが悩みだった。その理由がそこには書かれていた。

 「中学生の時、父にクンニされて感じそうになる自分を抑えるのに必死だった」

 エヌ子さんにとって、「イク」こと自体が「悪夢からの解放」だった。セックスに対する嫌悪感とイクことへの憧憬と自由への欲求が絡み合っていた。私は自分の至らなさを悔いた。

 すでに30才半ばを過ぎただろうエヌ子さんは、自分を手に入れただろうか。その後の連絡はない。

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