KAMEYAMAⅠ~vol.21 男と女の間には

男女ともに、セックスへの思い込みや勘違いは多いのだろうなあと思う。
他人と比べられない、本当にパーソナルなことなので、しかたがないのだけれど、だからこそもっとオープンに話せる場があってもいいのではないだろうか。

「前戯が長ければ長いほど、女は気持ちよくなるもの」

「挿入も長いほうがいい。女は何度でもイケるのだから」

男たちにはそんな思い込みが強い。
確かに前戯もなしに挿入するのは論外として、
ある程度長くしてもらったほうが感じる女性も多いようだ。
だが、それだって人によるだろう。
ちなみに私なぞは前戯が長いと飽きてしまう。
挿入時間が長いほうがいい。 だが、女性の中には、
挿入時間が長いと痛くなってしまうという人も少なくない。
その「長い」という時間だって、およそどのくらいなのか誰も言わない。

女友だちで、「挿入大好き。長いほどいいの」と言うから、
どのくらい長ければいいのかと尋ねたら、4時間半という記録があるという。
ずっと入れ続けていた男もエライと感嘆したことがある。
別の友人が聞いていて、
「私も自分が長いほうが好きだと思っていたけど、せいぜい30分が限界。
あなたの長時間と私の長時間は全然違うのね」
と驚いていた。だから一口に「長い」「早い」と言うのは危険かもしれない。

セックスの最中に、日常的な会話をするカップルがいると聞いて驚いたこともある。

「彼が普通に話しかけてくるから答えていると、
なんだか切羽詰ったような性感がなくて、イッたんだかどうだかわからないのよ」

その彼女は嘆いていた。
セックスの最中に、性的な言葉以外を発する男がいるなんて許せない、と私は思わず叫んだものだ。
おそらく彼は自分が早く終わってしまわないよう、気を鎮めるために別の話をしているのかもしれないが……。
だが、もちろん、会話をしながら、「まったりした」セックスをするのが好きという女性もいる。
私はセックスというのは、もっとどこかぎりぎりのところで刺激と興奮を楽しむものだと思っているけれど、果たして男たちはどう思っているのかわからない。

男と女という性の違い、さらには個人的な性の嗜好の違い。
男女のセックスの間には、いくつもの大きな壁が立ちはだかっているのかもしれない。


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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