KAMEYAMAⅠ~vol.19 感じた「フリ」をする女性たち

 

実際は感じていないのに、「感じたフリ」をする女性たちは以前から多い。ただ、その理由に変化が生じてきた。
以前は「一所懸命やってくれている彼に悪い」というのが主流だったが、今は「感じない女だと思われたくない」のがメインのようだ。
「性的に敏感だったり成熟したりしている女性のほうが、女として上だ」という刷り込みでもあるかのように。

だいたい最初のエッチから感じてアヘアへ言うようなことがあるわけがない。
怖いし痛いし、なんだかよくわからないままに終わってしまったというのがヴァージンでなくなったときの多くの女性の感想ではないだろうか。何度も繰り返すことによって、痛みはなくなり、だんだん快感が芽生えてくるようになる。自分の性欲を肯定し、セックスを肯定的にとらえる人ほど快感にもなじみやすい。「フリ」をする前に、自分の性の歴史を振り返ってみるのもいいかもしれない。

「厳しい親に育てられて、性的なことに興味をもつのはタブーだと教えられた。いつの間にかセックスは罪悪みたいに考えるようになってしまったんです」

30代半ばの女性は真剣な表情でそう言った。
もちろんマスターベーションもしたことがない。恋人がいたこともあったが、セックスをするたびに落ち着かない気持ちになった。
「どんな体位だといちばん感じる?」と言われて、彼への敬意が吹っ飛んだこともあったそうだ。

このままではいけないと思い、1年前からつきあっている彼には「感じているフリ」を続けている。
「あん」とか「いいー」とか言いながら、頭は常に冷静で、「早く終わらないかなあ」と考えているらしい。

「こんなことして何が楽しいんだろうと思ってしまう。そんな自分がとってもイヤ」

それが彼女の本音。
だがつまらない女だと思われたくないから、必死に演技をする。

心身の不調で、今ひとつセックスに乗れないということは誰にでもある。そんなとき、5しか感じていなくても8のように誇張するのをいけないことだとは思わない。

ただ、自分の中の性への罪悪感や軽視を見ようとせずに演技をし続けるのは、相手のみならず自分をも裏切ることになる。
なぜセックスをいけないことだと感じてしまうのか、そこをまず見直して、「男といちゃいちゃするのはいいこと、気持ちいいこと」ととらえていくことが必要なのではないだろうか。


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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