KAMEYAMAⅠ~vol.18 エッチの代金は割り勘?

 

バブル世代と違って、今の30代から下の世代は物心ついたときから、ずっと不況のあおりを受けている。
時代の閉塞感、何がなんでも男女平等の教育もあるのか、「デートはきっちり割り勘が当たり前ですよ」と20代の女性に言われた。

「お互いに実家住まいだったら、ホテル代はどうするの?」

「それも割り勘。部屋に入った瞬間、半分の料金を彼に渡します。私の友だちなんて、部屋を選んだとき、その場で割り勘にするんだそうです」

「へえ……」

エッチはふたりでするものだから、コンドーム代さえ割り勘なのだとか。
気持ちはわかるけど、そこまできっちり割り勘にしなくてもと割り切れない気持ちが残る。
次に会ったとき、彼女が食事代を出すということではいけないのだろうか。

「ただねえ、問題があるんです」

その20代の女性は言う。

「私は実はエッチが嫌い。彼はそうは思ってないと思うけど。彼もいつもしたいというタイプじゃないけど、月に1回か2ヶ月に1回くらいはしたいみたい。自分が好きじゃないことなのに、一緒にすることだからと割り勘というのは、もしかしたら平等ではないのかもしれないと思うようになってきて」

彼女は少し暗い表情になる。うーん、むずかしい問題。
自分の好きなものにつきあってもらう場合、こっちが奢るというのはよくあること。
たとえば、 「この映画が見たいからつきあって」と友だちに映画代を奢ることもあるだろう。

だが、エッチはそうはいかないと彼女は言う。
あくまでも「自分も気持ちよくなって喜んでいるのが前提」だから。

「今さら、私は実はエッチが嫌いだから、割り勘にしない、なんて言えない」

つきあって1年半たっているから、確かに今さら、エッチが嫌いだったとは言いづらいだろう。
かといって今まで通り「そこそこエッチ好き」のふりを続けていくのも、彼女にとってはつらいだろう。
いつかは言わなければいけないことなのかもしれない。ただ、「エッチが嫌い」という表現がいいとは思えないけれど。いずれにしても彼との関係は、そこからスタートになるかそこがエンドになるかの分かれ目なのかもしれない。


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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