KAMEYAMAⅠ~vol.17 彼に無理なことを要求されたら?

 

つい先日、30代後半の女友だちに相談をもちかけられた。
彼女には8年越しでつきあっている同世代の恋人がいる。
お互いに仕事が忙しいので、なかなか結婚に踏み切れないが、ふたりとも現状に満足しているという。

「彼は海外出張も多い。あんまり結婚する気もないみたい。私も特に結婚したいわけじゃないから、ここまで来ちゃったの。セックスの相性もいいし、連絡をとりあってわりと頻繁に会ってるし,不満はなかったのよ」

ところが先日、彼が突然、言い出した。

「オレたち、エッチの相性もいいよね。もっと気持ちよくなりたいと思わない?」

彼女はだんだん深くなるオーガズムを堪能しているが、もっと気持ちよくなるという言葉に反応した。

「自分の快感がどこまで深まるかには興味がある。そう答えたら、彼が『3人でしてみない?オレの知り合いを呼ぶからさ』って。最初は何がなんだかわからなかった。『あなたは自分の目の前で、私が他の男としても平気なの?』と言ったら、『平気じゃないよ。ものすごく嫉妬すると思う』と。だけど私のことが好きだから、そういうことをしてみたいって。彼は変態?それとも私に飽きたということ?」

世の中には、彼女や妻を他の男に抱かせたいと願う男が多くはないが確実にいる。決してレアケースではない。
男の心の奥底には「寝取られ願望」があるのかもしれない。
だが、一般的にはそういう願望に気づいていなかったり、気づいていても怖くてできなかったりするのだ。

彼がそう言いだしたのは、
決して彼女に飽きたわけでも変態だからでもない。彼女との関係は盤石だとわかっているから提案したのだろう。彼自身が自分の密かな願望に気づいてしまったから……。

だからといって安易にその提案に乗るのは危険かもしれない。それをきっかけにふたりの今まで築いた関係が不安定になる危険性もある。
彼がなぜそういうことを言い出したのか、それによってふたりの関係をどうしたいのか、きちんと話し合ったほうがいい。

「先入観なしに正面から話し合って。それができるだけの関係があるのだから」

私の言葉に、彼女は深く頷いた。

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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