KAMEYAMAⅠ~vol.7 バイブを使える男になれ

 

私は今、流行りのバイブレーターより、どちらかというと昔ながらの「電動こけし」タイプが好みだ。
バイブを使える(あるいは一緒に楽しめる)男はいい男だというのが信条でもある。 あるとき、友人がバイブを買ったというので、
「ぜひ彼氏と一緒に使ってみれば」と薦めた。数日後、彼女から連絡があった。

「週末、彼が来たのだけどバイブを見て気を悪くし、帰ってしまったの」

バイブを買うような女であること、ひとりでバイブを使う女であること、なおかつそれを恋人である自分に見せて使おうとしたこと、
などなどが彼の不機嫌の理由らしい。バイブを買うような女ってどういうこと?私たちは憤慨した。他の男と浮気したほうがまだいいのだろうか。ひとりでバイブを使うなんて、自立した女じゃないの。
それを一緒に使おうとしてくれないなんて、狭量すぎない?

だが、とある男性は私たちの話を聞きながら、ぽつりと言った。

「バイブってだいたい、本物のペニスより大きいんだよね」

なるほど、友人の彼が不機嫌になったのは、バイブに負けたと思ったからか……。だが、女はバイブと彼のペニスとを比べたりしない。
バイブはバイブ、ペニスはペニス。男が女のマスターベーションに関して狭量になると、いいセックスは遠のくのではないかとさえ思う。
つまり、女の体を知ろうとしないから、彼女がどういう妄想を抱き 、どういう刺激が好きなのかに目をつぶっているから。

セックスというものは常にフィフティフィフティでありさえすればいいとは思っていない。
悪い意味ではなく、相手を哀れむこと、自分のものだと下に見ることで興奮が増すこともあり得る。だが、恋人同士、夫婦のセックスなら、もう少し相手の心や感じ方に寄り添ってもいいはずだ。

バイブに劣等感を抱くなかれ、と男たちに言いたい。それよりバイブをうまく使う男になったほうが彼女からも愛される 。

「オレがいないときはこれを使って」

とバイブを渡され,彼とはなかなか会えなくなった、という話も聞いたことがあるけれど。

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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